雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

景気回復後に予想されるSIer格差

景気は循環的だから遠からず企業のIT投資は回復する。しかし同じことが繰り返されることはない。ユーザー企業が開発を主導するかは別として、新技術やIT統制への対応、事故に対する責任の顕在化で、担当者の身元や能力に対する管理責任も高まった。多重下請け構造ではリスクも施工能力も管理できないから、余裕のあるところから統制に責任を持てる体制にシフトしつつあるのではないか。

SIer主導ではなく、ユーザ企業主導の開発体制になって欲しい。そうすることで、ユーザ企業は、やりたいことを素早く安く上手に行うことができるし、SI業界も再生できる。これが私の願いです。

この不況をどう過ごすかで、SIerやSEの命運は大きく変わる。仕事にブランクが生じても最新技術にキャッチアップし続けられるか、景気回復後もリスクを抑えつつ需要増へ柔軟に対処できる施工能力を持てるかが鍵となるだろう。
ネットバブル崩壊後、サーバー価格は大幅に下落した。Dellのシェアが高まったかは別として他社にサーバーの見積もりを出す場合も同構成でDellのサイトで見積もりを取り価格交渉に使うことが一般化したからだ。ブロードバンドの普及で企業向けネット接続の価格が下落した。1万円以下で100Mbps FTTHを契約できるのに、たった数Mbpsで月数十万円も取る法人契約の積算根拠を説明できなくなったからだ。
企業システムがクラウドを活用するまで時間はかかるが、クラウドの料金体系は浸透前からSI案件の価格形成に影響を与え始める。AmazonSalesforceが日本で大きくシェアを伸ばすかは別として、ユーザー企業の担当者はベンチマーキングとしてAmazonSalesforceの料金体系を参照し、価格交渉に利用し始めるだろう。
これまで言い値で独自開発・個別運用できていたシステム提案が、透明な料金体系との比較で厳しい価格下落圧力に晒され、身を切るダンピング程度では対応しようのない差がつく。そういった時代を見越して投資余力とビジョンを持ったSIerは仕事の少ない今を新たな時代へ向けた研究開発と構造改革に振り向け、余裕のないところは人件費抑制で優秀な技術者から手放さざるを得ない。
ユーザー企業も、ITを軽視し相見積もりさえ取れないベンダ丸投げ企業から、システム企画をリードして施工管理能力を持った優良企業まで、事業やコスト管理の競争力で劇的な差が出る。後者は限られているが収益力があり投資余力も大きいから、力のあるSIerにとっての上顧客、優秀なSEにとっての魅力的な転籍先となるのではないか。
そうやってSIerもユーザー企業も、業界地図が書き換わっていくのだろう。