雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

隔靴掻痒のマニフェスト・党務情報化への期待

自民党公約を公開し、これで各党の政策が出揃った。民主党が分かりにくいのは、政策集マニフェストの違い。さらに公示日には地方分権を盛り込んだ版を出すらしいので、さらにヤヤコシイ。情報通信政策は、自民党が地デジ、民主党がネット選挙解禁に触れた程度で、やっぱ与野党ともIT doesn't matterなのかと考えさせられる。
ITは手段であって目的ではないから、必ずしもIT振興をマニフェストに書き込む必要はない。例えば自民党が盛り込んだ再来年の地デジ完全移行とか、だいぶ前に官僚が決めたことで改めてマニフェストに書いたことは理解し難い。アナログ停波延期であればニュース性はあるが。民主党が政策INDEX2009に盛り込んでいた周波数オークションや日本版FCCは首肯し難くも興味深かったが、マニフェストからは消えてしまった。業界的には融合法制やらNTT経営形態見直しの与党合意の扱いがどうなるか気になったが両党とも触れていない。与党合意を破棄するなら破棄するで大きな政治決断だからマニフェストで触れてほしいところだが。プリウスの納車が来年にずれ込むらしく、エコカー減税やエコポイントを続けるかも気になるところだ。
だいたいマニフェストという方法そのものが野党視点だ。与党であれば既に実行できるわけで、なぜ手をつけないのかという話になる。後から公表された自民党政権公約も「責任力」を前面に出すところでネタ詰まり感というか、野党を意識しすぎて滑っていないか。「あれれ年金問題どうなってましたっけ」と聞きたくなってしまう。さらに両党とも様々な政治志向や利害関係を抱えた中で、本当に重要な政治課題に対して往々にしてマニフェストは曖昧模糊となる。マニフェストで何もかも決めてしまうと党官僚が強くなりすぎるので、政権ができて党政調なり国会で議論すればいい話だが隔靴掻痒の感は否めない。
わたしは政治的にはリベラルな人間だから、男女別姓やらネット選挙といった何ら障壁がないにも関わらず政治的にブレーキを踏まれている問題に着目した点では民主党マニフェストに好感を持った。先の青少年インターネット利用環境整備法や、廃案になった児童ポルノ法改正でも、子細にみると官僚に依存して圧力団体に踊らされて細部を理解せず過剰規制に走りがちな与党の一部と比べ、様々な立場から幅広く意見を聞いて弊害や裁量の小さな規制に留めようとする民主党に近い立場だ。しかしながら政府の役割として重要な外交や経済運営について、例えば公務員人件費の2割減だとか、出先機関の原則廃止というと、方向としては間違ってはいないかも知れないが乱暴ではないかという気もする。彼らは膨大な官製ワーキングプアを生んだ小泉改革を批判したのではなかったか。
マスメディアで報じられている「渡り」で膨大な退職金を何度も受け取っているのは、キャリア官僚の中の出世競争を勝ち抜いた一握りに限られるのではないか。その辺は人事を大きく触るまでもなく、外郭団体の退職金制度を積立制にすればいい。他の多くの天下りは、民間大企業がやっているような、役職定年後に年金を受け取るまでの再就職に近い。
天下りをなくすために定年までの雇用を保障すると人事が停滞してしまう。そもそもキャリア官僚は優秀でコミュニケーション能力が高く、国費で海外出張までしているのだから、30代から40代前半で放り出したって十分に民間でやっていけるだろう。産官学を回転ドアで行き来しながら出身官庁に囚われず、スキルポータビリティの高い新たな人材像や、そのためのキャリアパスを構想できないものか。
制度というのは、これまでのやり方を続けるだけでも手間がかかるものである。ましてや新しいやり方を押し通すには、たいへんな情熱と能力そしてハードワークが必要になるだろう。悪役に仕立て、権限を取り上げ、給料を減らしてどうして仕事に打ち込めるだろうか。自民党のように官僚を信じすぎ頼り過ぎるのもどうかと思うが、民主党の政策の細部に魂を入れるのが誰か一向に見えない。
閑話休題。各党ともマニフェスト選挙対策に過ぎず、細かい党内調整プロセスを経た訳ではないだろうし、あまり血眼になって論じても詮無い。話をITに戻すと本来であれば、各政策の検討状況をリアルタイムで伝えることなど、まさにITの得意とするところではないか。この10年で霞が関のIT化が大いに進んで、役所の研究会なんかも概ね議事録や資料をネットでダウンロードできるようになったが、永田町はこの流れから大きく取り残され、一握りの若手議員がブログやtwitterと戯れているに過ぎない。政策も政治主導にしていくのであれば、これからは党の政策プロセスもどんどんネットでオープンにすべきではないか。
個々の政策について構想段階、報告書が出ている、法案ができている、法案がNCを通ったなど、それぞれの政策にも様々な段階がある訳で、この辺がリアルタイムに情報公開されると、突然出てくる政権公約に一喜一憂することなく、それぞれの党の政策遂行能力を把握できる公算が大きい。景気対策電子政府を作り直す話が出ているけれども、似たようなものをつくり直す前に党の情報化が先決である気がする。政策論争wikiで管理し、陳情をBTSでトラックし、予測市場で優先順位づけできないだろうか。PTとか政調会をtsudaってもらえないだろうか。永田町が電子化されれば、癒着を防ぎつつ霞が関との連携を円滑化できる可能性もある。党務情報化なら政権を取らなくとも今すぐ始められる。各党の公約なりマニフェストについて、実現できるか分からない大括りなものもさることながら、党内プロセスの見直しや政策過程へのIT活用に対する関心がもっと高まらないものか。新たなガバナンス構造を構想する上で使える飛び道具だと思うのだが。