雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

ケータイの内外価格差と日本版FCCへの不安

この時期に出る統計としては興味深い。国によってケータイの使途が違うので一概に比較することは難しいが、感覚的には日本ってデータ通信のヘビーユーザーには優しいが、音声単価やARPUでは他国より高いのだろう。

総務省が11日発表した2008年度の電気通信サービスに係る内外価格差調査によると、東京の携帯電話の通話料金は1分当たり27.7円で、パリに次いで世界主要7都市で2番目に高かった。ニューヨークが10円と最も安かった。

国際ローミングで稼ぐ欧州、これまで投資を怠ってきた米国とは市場も収益構造も異なり、音声通話を中心に比較することはアンフェアだが、他国で広く提供されていない高速サービスでは比較しようがない現実はある。
日本の携帯通話料が高いとして、空前の利益を上げている事業者もあるので通話料なり電波利用料を見直すとか、LTEか4G以降は周波数オークションを実施すべきではなかったかといった議論も考えられる。しかし800MHz帯の整理やらLTEで設備投資負担が各社に重くのしかかる中で、それをやると益々一強皆弱の流れが決定づけられてしまうという危惧もある。
米国との通商交渉を受けて独占から寡占へ、新興キャリアは外資から機器を調達するという暗黙の了解やら、規制を通じて勢力均衡を図りつつ料金水準は国際的に遜色ない水準を目指すという枠組みが、制度疲労を起こしているようにもみえる。
本来であれば与党合意として2010年を目途に市場競争を通じた消費者余剰と産業振興とのバランスをどうしていくべきか考え直すことになっていたはずだが、政権交代の可能性も取り沙汰される中で有耶無耶になっている。
民主党の主張する日本版FCCによる規制と振興の分離は、筋論として重要な問題提起を含むけれども、日本的な官僚機構の特質を考えた場合に、ベースとなる戦略を抜きに組織からつくると、一貫性のない政策となるリスクが大きい訳で、それはそれでガバナンスだから仕方ないのだろうか。
まああと癒着を防ぎつつ折々の論点にキャッチアップできる人材を配置するには、官民の流動性を高める方向での公務員人事制度の見直しが先にあるべきだが、本質を突いた人事改革より看板の架け替えと焼け太りの方がずっと楽で目立つことを考えると、あらぬ方向に転がらないか心配ではある。