雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

最初から悪意の黒幕なんかいない(かも知れない)という話

昨日今日と相変わらず「きっこの日記」に振り回され気味なんだけど、この視点は大事。邪推を捨てて、ものすごく好意的に仮説を立ててみよう。木村建設も総研も最初は欠陥建築をつくるつもりなどなかった。優秀な構造設計事務所が、地震係数の低い地域で鉄骨70Kg以下でも耐震基準を満たしたホテルをつくった。彼らが東京に進出したとき、地震係数の違いも小間の多いホテルと開放的な間取りのマンションとの違いも分からずに「広島のホテルではできたんだから」とか何とかいって、同じ鉄骨量を別の構造建築士に押し付ける。
建築士のスキル不足か、間取りや地震係数の違いからかは分からないけど、どう計算しても基準に収まる設計ができない。けれども建設会社は経験から「できないはずはないんだから」といい、鉄骨の減らし方も具体的に提案してくる。建築士は最初こそ「できないものはできない」と突っぱねても説得できず、宥めすかし脅かされて、いわれてもいないのに構造計算の偽造に手を染める。いちど偽造に手を染めれば後は感覚が麻痺して、構造計算偽造の常習犯となっていく。途中で木村建設も総研も薄々偽造に気づくけれども、事情を説明して建て直す訳にもいかず、「ばれないといいなぁ」とびくびくしながら政治家とのパスをつくったりリスクヘッジに勤しみつつ、次第に共犯関係は深まっていく。
総研にしてもヒューザーにしても、それなりに商売熱心だけど、道から外れたことに気づいた後の考え方が甘かったんじゃないかな。けれども破滅をできるだけ先送りしようというのは弱い人間として自然なことで、自分が同じ立場で問題に薄々気づいたとき、自分から地雷を踏むだけの勇気があるかというと自信がない。政治家だって献金受けていたら追求は避けられないとおもうだろうし、役人だって自分の任期中に穿り返して欲しいはずがない。
いや、もっと明確な悪意を持った奴がいて、逃げられなくなったとき、裁判で善意とも取れるように口裏を合わせてるだけという可能性もなきにしもあらずだけれども、上のようなシナリオでもそれなりに説明できそうな気もする。
実は似たようなリスクは情報システムにもあって、すごく練られたシンプルで低コストなシステムと、何も考えていないでコスト優先のかたちで組んだシステムと、素人目には見分けがつかないこともある。素人考えで無理なコスト削減を要求し、とても危険な状態を放置している情報システムって少なくないんじゃない?

追記:
まだマスコミから追求されず、マスコミに対してこの件の幕を引くよう圧力をかけている「黒幕」くらいは、いそうな雰囲気だよね。自民党の証人喚問も、自己顕示欲というよりは悪意があって姉歯に話させなかったようにもみえる。だとしても彼は別にヒューザー木村建設に最初から不正をしろと指示したというよりは、構造設計の偽造に気づき「まずいなぁ」となった後から相談&献金受けた政治家とか団体があったとか、この手の話は穿り返すといくらでも出てくるから騒がれても困るとか、その程度の話ではないだろうか。憶測だけど。

もちろん隠れている悪いヤツらをさらし出すことはとても大切なことなのですが、誰か一人悪いワケじゃないって事は常に重要です。行政も含めて、全部グル。そういう中、それぞれの悪いヤツら達が、「あいつに少しでも多くの責任を‥‥」と駆け引きを繰り広げているのが今の状況だと思います。