雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

GoogleやiPodの共通点と,プラットフォーム戦略の落日

GoogleAppleの共通点はコモディティを組み合わせた垂直統合モデルを指向している点だ.Googleのサーバー群もiPodIntel Macも,汎用部品を使うことでハードウェア・コストを下げている.一方で組み合わせや環境を限定することでソフトウェアのテスト工数を減らし,リリースサイクルを短期化して,単純で洗練されたユーザー体験を提供している.
マイクロソフトPCが各社独自仕様だった時代,ソフトやハードの互換性を保つ薄い層(BASIC, DOS, Windows)を提供することでエコシステムを構成し,水平分業による競争を促し,PCや部品の価格を劇的に引き下げた.LinuxGoogleiPodいずれも,PCエコシステムによる部品の汎用化と低価格化がなければ,そもそも登場しなかったのではないか.
水平分業の枠組みを提供し,プラットフォームを握る戦略は,ハードウェアをコモディティ化する上では有効である.しかしハードウェアが一旦コモディティ化されてしまうと,従来の資産は一転して負債となる.サポートすべき既存アプリケーション,周辺機器が足枷となって設計負債が生じ,テスト工数が増大し,リリースサイクルが長期化して顧客の要望を反映しにくくなり,相次ぐ機能拡張でユーザー体験も複雑化してしまう.工数が爆発的に増え,無闇に関係者が増えて組織が官僚化する.そして自分のアイデアを世に問うべくプラットフォーム・ベンダに身を置いていたalpha geekたちから,もっと身軽な世界へと逃げ出してしまうのだ.
人材の流れや市場での評価をみる限り,この世界には引き続き競争を促すネガティブ・フィードバックが働いているし,新しい事業機会に満ちている.成功の鍵は「うまくいっているものを真似る」工業時代のキャッチアップ・モデルではなく,いまの世界をインフラとして捉え,新しい価値を創造し,コンセプトを迅速に世に問えるチャネルを築き,そういった事業基盤を通じて優秀な人材を惹き付けることではないか.
OSとか検索といった陣取り合戦の本質は「より洗練された部品をつくる」工業社会の競争ではなく,アイデアを世に問うパイプラインをつくってエコシステムを形成し,その魅力で優秀な人材とアイデアを囲い込む競争なのだ.そこを理解しないから国産OSをつくろうとか国産検索エンジンをつくろうとか,泥棒をみて縄を綯うような議論が横行し,貴重な国費や人材を浪費し失敗を重ねてしまうのである.困ったものだ.