雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

SEを壊さない社会へ向けて

週刊東洋経済の9/29号が「システムエンジニアが壊れる!」という特集を組んだという.SEの置かれている状況については時々本blogでも取り上げ,その度に大きな反響があるのだが,放っておくと優秀な技術者がますます情報サービス産業を去り,或いは優秀な新卒はこの業界を目指さなくなるだろう.景気回復で大手SIerの経営内容が改善し,技術者需要の旺盛な今のうちに抜本対策を打つべきではないか.という訳で,何をしたら業界が変わるか少し考えてみた.

偽装請負の厳罰化・摘発強化

重層的な下請け構造を破壊する最も効率的な方法は,偽装請負を根絶することである.直接指示を出せなければ,5次下請,6次下請を使うことはコミュニケーション・コストが大きくなり過ぎて割に合わないのではないか.偽装請負は今でも最大懲役1年,罰金100万円とそれなりに厳罰だが不十分である.法人罰として業務停止命令を出せるようにすべきである.特に大手SIerなど,個別プロジェクトで全社の業務停止命令を受けたら全く割に合わない.

労働基準法の厳格適用

無茶な残業を認めなければ,そもそもSEが壊れることはないのだ.或いは適正な残業代の支払いを義務づけるだけでも状況は改善する.

内部告発者所得保障制度の策定

偽装請負にせよ残業超過にせよ,摘発は内部告発に大きく依存する.当座の職を失なったり,摘発者として再就職が難しくなる可能性を考えると,なかなか内部告発には踏み切れないものだ.告発から再就職までの期間の所得を保障すれば,もっと告発は増えるのではないだろうか.

元請紹介制度の策定

紹介予定派遣と同様の発想で,下請エンジニアと元請との関係が一定期間を超えて継続している場合は,元請による雇用を義務づける.こうすることで大手SIerが下請エンジニアを雇用の調整弁とすることが難しくなる他,エンジニアのキャリアパスも開ける.下請企業から優秀な人材がいなくなるという反論もあろうが,人材を手放したくなければ仕事単位で請けてローテーションすればいいのであって,業界健全化のためにも口入れピンハネだけしてるような会社は整理すべきだ.

デスマーチ減税

プロジェクトの失敗を認めた場合,徹底的な情報開示,例えば破棄したコードのオープンソース化などを条件に開発費用の損金算入を認める.顧客企業としては早めに損切りをした方が得なので,これまでよりも早くプロジェクトの失敗を認めることになる.情報開示を義務づけることで,失敗の共有が図られSIの質も向上する.捨てたコードが晒され,第三者によって分析されるようになれば,SIerもいい加減な失敗が出来なくなるのではないか.昨今リスク管理の強化でSIerによる提案のコモディティ化を呼んだいう指摘もあるが,失敗しても損金算入できるのであれば,税金対策でエッジの効いたプロジェクトも増えるかも知れず,失敗しても教訓を業界全体で共有でき,誰かが骨を拾うかも知れない.