北の火遊びはスカかも知れないが時計の螺旋は巻いた

テレビはずっと北朝鮮の地下核実験について報じている．ハッピーマンデーのテレビなんてつまらないものばかりだから普段はつけないのだが，mixi日記で正午過ぎに実験実施を知ってからテレビをつけ，だらだらと眺めた．休日の暇つぶしとしては悪くない．爆発力は想定より小さかったというし，北朝鮮の発表でも放射能漏れはないといってるので，これはスカだったかなという気もする．弾頭に収められる大きさで実験したから威力が小さかったという話だと困るけれども．
先日のテポドン2といい，今回の地下核実験といい，彼の地のやることは周囲の危機感を刺激し自らの立場を追い詰めつつ，肝心のカードが何れも微妙に期待はずれというのも如何なものか．必死であるようにもみえるし，どこかで万全を期せないというか，抑えが利かなくなっているようにも感ぜられる．
ところで実験の振動を日本で観測したのは長野県松代というが，松代の穴というと，戦局が悪化して本土空襲が避けられなくなった1944年から大本営を移そうと掘った所謂「松代大本営」ではないか．何か因縁めいたものを感じる．テレビで流れている朝鮮中央テレビの勇ましいアナウンスと，我が国に於ける戦争末期のニュース映画とか大本営発表の勇ましいアナウンスとは，どこかかぶるものを感じる．
第二次大戦中，昭和天皇は短波ラジオで正確な戦況を掴んでいたというが，北朝鮮のエリート層もNHK BSか何かをみながら「これでまた色々とやりにくくなったね」とか相談しているのだろうか．祝賀ムードに沸いているのか，自棄酒に溺れているのか，更なる経済制裁を見込んで必死に資産隠しでもやっているのか．
いずれにせよ北朝鮮が核保有国ということになると，これまでの和平へ向けた枠組みが根底から壊れる訳で，体制崩壊も含めた様々な可能性について議論せざるを得なくなる．米国はイラン政策の目くらましもあって意気軒昂となる可能性もあるが，北朝鮮から発生するであろう大量の難民の面倒をみるのは中韓だし，崩壊後の北朝鮮，特にその経済復興の面倒を見ざるを得ないのは韓国であって，タカ派ハト派とかそういった次元ではなくて，北朝鮮問題をどう円滑に処理していくかについては，この両国との連携が不可欠だろう．
そういった意味で安倍首相の最初の訪問国が中国・韓国であったことは，かなりタイミングが良かったのではないか．核武装は周辺国を刺激する割にカードとして使い勝手が悪い気がするが，情報収集の枠組みを中長期的にどうするとか，自衛隊の戦力構成について米軍再編も睨んでバランスをとるとか，体制崩壊後の統一朝鮮に対してどのような復興支援を行うか検討し始めるとか，準備すべきことは山ほどある．