雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

Youtubeと地上波が逆転した日

Winnyが指弾された時,P2Pから新しいインディーズ歌手が台頭すれば偏見が払拭されるのではないかと期待した.けどそうはならなかった.一方でネット動画は思ったより早くジャーナリズムとして定着しそうだ.
当て逃げした自動車の持ち主が解雇された事件は,Youtubeに動画が掲載されてから2ヶ月,ネットで盛り上がってから2週間遅れの今日からTVニュースが一斉に報じた.これほどYoutubeの同じ動画が繰り返し放送されたのは日本では初めてではないか.mixiでの個人特定とか,過去の言動に対する検証も定着してきたし.遠からず一次情報はネットで,テレビって二次情報ばかりだよねー,とかいわれる時代が来るかも知れない.活字の世界では数年前から2chをネタ元に使うことが一般化していたが.
ところで車の持ち主が犯人かどうかは分からないけど,今回の件では器物損壊で被害者が届け出ても,速やかに被害届を受け取らず,送検しない警察が一番悪い.これほど警察が捜査姿勢に対する信用を失うと,Youtubeに被害届を出して2chで判決をもらい,モブたちが私刑に処するというフローが確立してしまうかも知れない.車載カメラは高級車の標準装備となって,360°数日分は常にHDDに録画されるとか,衝撃を受けると圧縮率を下げて高解像度で撮るとか,そういう防犯機能も一般化するとかね.
警察が思うように動いてくれないからといって,リトルブラザーやネット私刑を受容するような社会が良いかどうかは慎重に判断する必要がある.*1けれどもネットで緩やかに組織されたモブポリスが関係者を勝手に断罪できるくらいに大衆運動のロングテール化は進んでいるのだろう.
いささか不謹慎な言い方になるが,動画を見て憤り,mixiで個人情報を絞り込み,被疑者を直接的に追い詰めていくことは,暇人にとってワイドショーやゲームよりも遙かに魅力的なリアルタイム参加型エンターテイメントではないか.マスメディアはネットでの大衆による犯人捜しや個人情報流出を批判するだろうが,彼らのやっていることだって犯人捜しを疑似体験させて,野次馬根性を刺激している点では本質的に変わらない.
とはいえ個人に対して権力を行使し得る立場が,大衆だからといって責任を負わないのは危険だ.暴走した大衆によるネット私刑が横行する社会に「疑わしきは罰せず」という歯止めをかける方法はあるのだろうか.そしてテレビは単なる周回遅れの人力動画編集編成サービスに堕ちてしまうのだろうか.

元の動画

各局のニュース
フジテレビ

日本テレビ

テレビ朝日

*1:無論,ネット私刑だからといって違法行為が正当化される訳ではない.祭り参加者の責任についてはbewaadさんが整理されている.仮に当て逃げまたは当て逃げ犯に車を貸したことに対して,解雇が行き過ぎた対応であったとして,一義的には勤務先の対応が問題となろう.加害者は祭りへの参加者を訴えることは難しいものの,解雇無効を主張して元勤務先を訴えることはできる.