雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

別にプログラマにならなくていーじゃん

増田氏は東大を微妙に過大評価しているんじゃないかな。確かにCPUを設計するカリキュラムはあるが、昔は回路設計までやっていたのが今はVHDLなので、ちょっと言語は違うがプログラミングのようなものだ。
何年か前にカトラーと一緒にNTカーネルを書いていたデイヴ・プロバートが本郷でWindowsの講義をしたが、OSをいじったことのある院生や講師しかついてこれず、翌年からは授業内容を見直した。まあ彼の英語が早口だとか、講義がうまいかどうかとか別の問題もあるが。僕も講義準備のために聴いたが、ポンポン話が飛ぶのでついていくのが大変。仮想化周りの話を機械語レベルにブレークダウンして解説してくれたことには感動したけど。
授業でOSをほげるのと、それが使える技術かどうかは別の話。コンパイラもそう。途中からはバッドノウハウの塊だから、実用を志向した途端、教育的には時間の無駄となることも多い。まあバッッドノウハウにまみれて何かを完遂すること自体の教育的意義は大きかったりするが。

東大の情報系を卒業する頃には、
"ゼロから"
CPUの設計ができて、プログラミング言語を設計し、コンパイラが書けて、OSを載せて、
その上で例えばレイトレーシングを動かせるくらいの力量がつく。

まあ優秀な東大生というのはいるし、優秀故に能力に相応しいところを得ることが難しいこともあるのだろう。東大の情報を出るとITではなく外資系金融とか戦略コンサルに行くのは時代の流れだし、別にいいではないか。下世話な話だが、そういう世界が能力に応じた給料を払うのは結局のところ儲かっているからだ。裏を返せば情報サービス産業は、どんなに優秀な人間であっても、その能力に応じて儲かるようにはできていないのだとしたら、それだけの給与を払えないのは仕方ないし、そういった世界で搾取されたり腐ることは何より本人のためにならない。どうしてもプログラマをやりたいなら、自分で会社をつくるなりベンチャーに行って一攫千金を狙うなり、米国に渡るなりすればいい。
別にGoogleじゃなくたって、米国のテクノロジー企業であればプログラマの能力に見合ったキャリアパスはきっちりある。管理に進まなくても技術力を尊重し、きっちり遇する仕掛けができている。それができるのは、繰り返しになるが事業が儲かっていて、彼らの能力が、その価値の源泉として認められているからである。それと技術者をそれなりに遇している米国でさえ、実装ならインドや中国でいいじゃんということで学生のIT離れが進んでいることも押さえておくべきだろう。
いずれにしても情報サービス産業の過半を占める人月ベースの口入れ稼業では、米国くらいの待遇を用意することさえ難しい。日本のソフト産業というのは、製品ビジネスでいうと組版や会計のように非関税障壁で守られている領域が残っているが、既に囲い込まれている上に市場は限られているし、他は概ね受託ベースで付加価値の小さな世界である。日本に留まってソフト開発そのものの価値を売ろうとすると、しんどいし悪平等だし全く割に合わない。細かいところをみれば例外は散見されるし、そういう例外を増やしていくことは非常に大事だけれどね。
僕は数年前まず自分がそういった世界から抜け出すことを考えたし、ここ数年は、そういう世界を変える方法がないか考えている。まだ答えはみつかっていないが、いろいろなことが分かってきたし仲間も増えた。増田氏が何者かは分からないけれども、まずは自分がそういう現実とどう向き合い生き延びるかを考えるべきだし、次に余裕があれば、じゃあ世の中どうしていくべきかを考えてみることがあってもいいんじゃないかな。別に僕は現状で東大生がプログラマにならなくたっていいと思っているが、ただ能力あるプログラマが国を棄てずに報われる仕組みはあった方が、この国にとっていいだろうとも感じている。

補足: こんなトラバをいただいた.Googleもさることながら,最近はサービス工学寄りで給与体系も電機労連系のIBMに,どういうモチベーションで行っているのか興味深いところ.まあ,どっちにしても外資か.

金融系行く人もいらっしゃいますが、今年就職する方だとGoogle, IBMで既に3/4ぐらい占めていらっしゃいます。