雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

街とネットと - スマートゾーニングへ向けて

やっぱり携帯やPCでフィルタリングを原則化するのは変だ。街だってSNSと同じように出会いがあるけれど、たまたま渋谷で援交した子がいるから渋谷駅の改札口は未成年じゃ開かないようにと鉄道会社を突き上げる馬鹿はいないだろ。コンビニで酒や青年雑誌を売っているから、未成年じゃコンビニの自動ドアが開かないようにしようなんて議論も聞いたことないよね。普通に困るし。
たぶんフィルタリングを推進している方々も悪気はなくて、フィルタリング業者が「子供の安全を守るためにフィルタリングが必要です」てな具合で煽るものだから「こんな素晴らしい技術がどうして普及しないんだ。親の意識が低いせいならば政府主導で普及を図らねば」という話になったのだろう。
ただ表現の自由や通信の秘密を盾にフィルタリング反対を叫んでも詮無い。フィルタリングが具体的にどう問題なのか分かりやすい例を挙げて説明し、業界として襟を正して子供たちが事件に巻き込まれにくいアーキテクチャに取り組む必要がある。
僕はひとりの親として、まだ6歳の長男に携帯を持たせていないが、遠からず持たせることも考えている。そこでフィルタリングに加入すべきかどうかは非常に悩む。ホワイトリスト方式は明らかに行き過ぎだし、ブラックリスト方式もデータベースの中身を吟味しないことには判断し辛い。
例えば或る移動通信事業者の提供するブラックリスト型のフィルタリング技術では、政治・宗教・ライフスタイルといった項目がフィルタリングの対象となっているそうだ。これでは寺や教会が子供の悩みを聞くようなサイトまでフィルタリングの対象となり、自由研究で政党のマニフェストを確認しようにもできなかったり、性同一性障害について真剣に論じているサイトも弾かれてしまう。
モバゲータウンも子供同士で仲良く遊ぶ分には構わないし、男の子だから大きな危険はない気がするが、やはりフィルタリングされてしまうらしい。こんなに不便で融通がきかないなら、リスクはあるが子供に持たせる携帯からフィルタリング機能は解除せざるを得ない。
ブログに書く前に、というか子供に携帯を持たせる前にフィルタリングの内容を確認したいのだが、データベースが公開されていないのでそれもできない。親としてフィルタリングを導入すべきか否かの判断材料が全く提供されないまま、テレビCMであたかも子供に持たせる携帯でフィルタリングを行うことが親の責務のようなアナウンスがされているのは正直いって不快である。普通の親はここまで考えないだろうから、子供がモバゲータウンでゲームを遊びたくてフィルタリングを解除して欲しいといった時、まさか出会い系サイトにアクセスするんじゃないかと心配するのではないだろうか。
特にブラックリスト型のフィルタリングは接続毎に全てのデータベースと要求URLとを照合するため膨大な設備投資が必要になるという。これらが結局は利用者の通信料で賄われるのは如何なものか。もっときめ細かい設定ができるのであれば、子供に持たせる携帯には是非フィルタリングを適用したいのだが、今の技術はブラックボックスだし、あまりに未熟過ぎて融通がきかない。
優れた未成年保護技術は、きっと都市計画に於けるゾーニングのようなものとなるだろう。飲み屋や風俗は決まった場所に寄せられ、子供が簡単には迷い込まないようになっているし、迷い込めば目立つ。酒や煙草、有害コミックの売っているコンビニに子供も入ることはできるが、買おうとすればレジで弾かれる。
今は検索エンジンなんか特にゾーニングも何も行われていない状況だから、子供が簡単に有害コンテンツにアクセスできる。せめて実社会と同じようにコンテンツ事業者が子供を子供として扱えるようにできないものか。息子がグーグルの検索機能を使った場合は、あまりエッチなコンテンツに引っかかって欲しくないし、子供同士のコミュニケーションは構わないが、見知らぬ大人が年頃の娘に近寄ろうとするのは避けたい。子供にはてなダイアリーへのアクセスを認めても、赤裸々なエントリは中学生までは読めないようにしてもいい。クラスのコミュニティをホストする公式なサイトがないから学校裏サイトが流行るのであって、先生にも把握できるかたちで児童たちのネットコミュニティをつくり、悪意ある大人からのアクセスは排除すればいい。
PICS、P3P、POWDERといった技術を組み合わせれば、技術的にそう難しくないはずだ。モバゲータウンだって子供を子供と分かれば、大人から子供へのコンタクトを抑止できる。コンテンツのフィルタリングとラベリングをコンテンツ事業者が自主的に行えば、技術革新と子供の安全とを両立できる。不正なラベリングを意図的に行っている悪質なサイトのみをブラックリストに登録すれば、データベースを小さくでき、ゲートウェイ・サーバーの負荷を抑えることができる。このブラックリストは広く公開し、登録と解除の手続きも透明化すべきだろう。ソーシャルブックマークと連動させれば、群集の英知を活用して迅速な更新が可能となる。
いまの稚拙かつ強権的なフィルタリング技術を無理に普及させるのではなく、コンテンツ事業者主導でインフラへの負荷が小さく、効果的で、新規事業を阻害せず、子供にとって自由度の高い未成年保護技術をつくろうではないか。手垢のついたフィルタリングという言葉からは距離を置き、これをゾーニングと呼ぶのはどうだろう。そして業界を挙げて、標準に基づき弊害が小さくオープンなゾーニング技術を開発することと引き換えに、未成年フィルタリング原則化は少し待ってもらえないだろうか。
来月中盤といわれる法案準備まで時間がないが、過度な規制の阻止とスマートゾーニングの実現へ向けて、具体的に動きはじめたい。