雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

縦書きと横書き&ソーシャル紙手渡しプロトコル

僕が昨日のMiAU会合で解説したのは、会見の直後だから23日か24日時点の高市案縦書きですね、もう死んでますが。そうそう今日、4月18日付の内閣部会案横書きを入手。遅ればせながら噂されていた分に関して全ての部会案が手元にそろいました。あちこち出歩いて、人と話して、まるでロールプレーイングゲームでアイテムを集めている感じですな。残念ながら、この紙は審議会をつくる話だけ残して昨日の会議までに死んでいるらしい。単なるコレクターズアイテムか。ところで横書きは会議資料として日付が入っている場合が多いのですが、いわれてみれば縦書きドラフトに日付とかバージョン番号が入ってないのは不思議です。

みんな案文を公開しないで議論してるんですよね。
公開する場合にはころころ修正するんだったら
  「高市案ver.20080502」
みたいに表示してくれませんかね。

知らないひとに説明すると縦書きとは法案の案文で、横書きは骨子のこと。ソフトウェア開発に例えると、縦書きがソースコードで横書きは仕様書とか要件定義書となります。見かけは縦書きも日本語ですが、形式論理的な一貫性が求められるため、常に関数のスコープとか意識しながらプログラミング言語と同じように形式的に読む必要があるので注意が必要です。高市法案なんか間接ポインタの塊みたいな感じで気持ち悪いしチンプンカンプン、あと日本は大陸法なので多くの場合は既存の法体系に対する差分プログラミングとなっているので依存関係も意識して読まないと意図を掴めない場合とかあります。
今回の件でディープに関わって驚いたのは、国会議員でさえ縦書きリテラシーを持つ人は極めて限られていることです。選挙で通ることと政策立案家としての実務能力とは別なんでしょうけど、どうも縦書きを読める人さえ限られているっぽいし、書ける人に至っては一部の官僚OBくらい。しかも議員先生は政務で忙しいので、書けるからといって時間をかけて自分で縦書きを書く暇なんてありません。米議会のように政策スタッフをもっと増やすべきですよね。
米国の場合、米英法は軽量言語というか、かなりいい加減な法律でも通せるし、法律間の整合性は柔軟に裁判所が遅延評価してくれて、憲法違反があってもバシバシ法律を執行停止してくれる訳ですが。大陸法で政策スタッフを抱えず政治主導・議員立法なんてB-29に竹槍で立ち向かうような話で、選挙へ向けた実績作りとしての理念法なら弊害は小さいのですが、実効性を担保しようとすると話がヤヤコシクなる。
そうだな、コードを書けないSEが仕様書を起こして、その仕様書通りにコードを書いたとして、誰からも呼び出されないコンポーネントであれば弊害はないけど、呼び出されて制御の回ってくる箇所だと面倒、みたいな話でしょうか。法律要件が見当たらない横書きに至っては、仕様書どころか要件定義のレベルで大丈夫なのかという議論もありますが、きっと政治主導ってそういう世界なのだろうし、小選挙区制中心の政治制度を見直さないのであれば、徐々に大陸法から米英法っぽく切り替えていくこととか考えた方がいいかも。
もともと日本は英国の法制度を真似ようとして、判例がないと機能しない英米法を持ってくることを諦め、短期間でコピペできるプロシアの制度を持ってきたんだけど。まあ、大陸法から米英法に段階的移行した国なんて聞いたことないし、実際問題として日本の法制度や政治風土、人材育成の手間とか考えると、比例代表の割合を増やして従前通り内閣提出法案を中心とする方が合っている気がするけど。
で、永田町と霞ヶ関の関係って難しいですね。今回、いろんな議員と会っていて驚いたのは、前後の面会相手で役人の多いこと多いこと。審議官、参事官、局長、課長クラスが次々と「ご説明」に上がってる。縦書き横書きは課長補佐クラスが取りまとめて、課長級以上は永田町巡礼がお仕事なのかー、と納得。下手に公務員人事制度改革で公務員の政治家接触禁止とかやると、大混乱になるね。
で、永田町と霞ヶ関の間の連絡は全くIT化されてなくて、基本的に紙手渡しというプロトコルが主流っぽいです。コピー機がルータですね。たまにファクシミリという飛び道具が使われますが足がつくのが難点です。彼らは直接いろんなやり取りをしてますが、たまに新聞記者とかロビイストメッセンジャーボーイとなっているようです。
正力松太郎とかナベツネがまさにそうですが、日本で最もロビイストっぽい仕事って新聞記者かも知れませんね。明治の昔から、政界転出の多い職業ですし。放送局の電波割当ロビイング担当を昔から波取り記者と呼んでいて、常々記事を書かない記者って変だよなと感じていたのですが、そうじゃなくて、記事を書く記者の行動様式だって実はロビイストそのものだったのかー、ということで妙に腑に落ちました。
日付も製作者も書かれていない紙が結構あるので、手に入れた紙をいくつか並べて、出元、意図、真偽、新旧、現時点でこの紙が生きているか死んでいるかとか、読み合わせて推理ごっこをするという不毛な仕事もあります。利用率の上がらない電子申請とかどうでもいいから、リビジョンと論争と関係者を一望できる永田町・霞ヶ関共用の法案Wikiとかつくれないですかね。文法チェッカーならぬ法体系整合性チェッカーみたいな機能もつけて。
まあ対面式紙複写譲渡プロトコルだからこそ、レピュテーションベースで情報共有範囲が動的に設定され、トポロジに応じた柔軟な遅延を設定できる訳ですが。そろそろ行政窓口の電子化だけでなく政策過程の電子化を考えるべき時期だと思うんですよね。意図や社会的機能も分からなくはないけど、民間の視点からみて労働生産性が低い気がするんですよ。風情とか政治的重みはありますが。どうすれば政策形成過程の円滑な電子化が進むんでしょうか。
政策形成の迅速化と霞ヶ関住民たちのワークライフバランス改善へ向けて、絶対にやるべきだと思うんですが。彼らってIT利活用とかホワイトカラーの生産性改善云々といった議論を民間に押し付ける割には、いつも紺屋の白袴なんですよねー。そこが最期のホワイトカラーというか、情報サービス産業に増して労働集約型産業であり続けるのか、気になるところです。