雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

最新の状況と明日のICPC

今日までを予定していた実務者による与野党調整は、週明けに持ち越された模様。最新の自民党案に対して、様々なところから再び反対声明が出ることになりそうだ。自民党内閣部会よりも時間をかけて議論して国民に逐次説明してきた民主党も、与党の公明党も、引き続き筋を通している模様だが、来週どう転ぶことになるか、まだ予断は許さない情勢だ。
最新の自民党案では統制色の強かった指定フィルタリング推進機関について、外形要件による登録制となったようだ。これは大きな改善ではあるが、前のエントリに書いたように外形要件であっても運用如何で民間第三者機関を支配し得る。事業計画が財政支援を前提としていれば、補助金の蛇口を絞るだけで財務適格を満たせなくなり登録を抹消できるからだ。これは法律論から離れるが、いかに財政的に自立し、適切に機能する第三者機関をつくるかが肝要だ。
財政支援がなくともフィルタリングは事業として成り立っており、市場が機能している。そもそも何のために法律をつくるか、混乱を来たしつつあるのではないか。問題はフィルタリングソフトの利用率であって、性能や精度ではなかったはずだ。そして官が推進計画を後押ししたにも関わらず、フィルタリングの利用率が上がっていないのである。
有害情報と違法情報とを混同して扱っている点も問題だ。そもそも違法情報の定義が難しい問題であることは措いて、違法情報についてサーバー管理者に青少年閲覧防止措置を要請することは、証拠隠蔽に繋がる虞がある他、公務員法239条にある告発義務との整理を要するのではないか。
違法情報と有害情報とは峻別し、有害情報はフィルタリングで選択的に遮断し、違法情報は警察等の法執行機関が対処すべきだ。警察による対応を待たず青少年閲覧防止措置を取る必要がある場合は、捜査妨害や証拠隠匿に繋がることのないよう、慎重な制度設計を要する。
議員立法の良くないところは内閣提出法案と比べて検討経過が情報公開されていないこと、パブリックコメント等の手続きを経ず、国民的な議論を踏まえた幅広い意見を反映させる機会がないことだ。民主党案のように早くから広報に努め、案を公表しているならともかく、密室で検討が進んだ自民党案には詰めるべき点が少なからず残っている。
明日GLOCOMで開催するICPCでは、結論が出ている前提で、関係者をお招きする予定だったところが、議論が延びたことで当初予定していた方々をお招きできなかった。冒頭で簡単に最新状況を共有し、法案の件に囚われず、諸外国でどうなっているか、そもそも本来どうあるべきかについて、ざっくばらんと議論できればと考えている。