雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

誰がケータイを値上げしたのか

これは去年のモバイルビジネス研究会の件で、僕も議論に参加したので覚えている。僕の意見は販売報奨金は禁止しないが、端末を買い換える余裕のない利用者の通話料で頻繁に端末を買い換える富裕層を補助するのは逆進性が高いことは問題なので、報奨金なしの料金プランの提供も義務付けよう、SIMロックについては性急に導入しても端末製造時業者を疲弊させるだけなので3.9Gや4Gまで様子を見よう、というもので、最終報告書もそれに近い内容に落ち着いている。
実のところ販売報奨金を廃止したかったのはキャリア各社で、国内市場が頭打ちする中でMNPで他キャリアからは低価格と魅力的な端末で巻き取りつつ、既存加入者の機種変更周期は管理しようという料金設計になった訳で、結果としては総務省の検討を受けた体裁とすることでカルテルにならず出血を止めることができたんじゃなかろうか。
販売報奨金やSIMロック規制について議論は惹起したけれど、新たに何かしら法的規制をつくった訳じゃないし、その辺どこか松本さんの認識には誤解がある気がする。何故か研究会の後、各社横並びで料金体系が見直され、端末製造時業者も何社か携帯事業から撤退したり事業売却したり、僕もあまりの社会的影響の大きさに驚いたけれど。
スポットを当てて平場で議論しただけで状況の方が勝手に変わった訳で、必ずしも役所が民間のビジネス慣行に介入したというよりは、囚人のジレンマで妙な部分均衡にあったところを掻き回しただけではないかという気もするんだけれども、どうなんだろう。
規制の有無はさておき実際問題として社会的影響力はあった訳で、有識者も事業者も通り一遍のポジション・トークに留まるんじゃなくて、ちゃんと真面目に網羅的かつオープンな議論をしないといけないよね。そうしないと後から説明できない。そういった意味でも、かなり当座の論点は出尽くした良い研究会だったと振り返る。

ところが、皮肉なことに、日本では、携帯端末メーカーが海外市場では全く不振である現状に危機感をもった総務省が、この原因が「通信事業者の過大な支配力にある」と勘違いした節があり、携帯端末の企画と流通を巡る現在のビジネス慣行に介入することを考えはじめたかのようです。しかし、私の見るところでは、この介入の中には、妥当なものもありましょうが、どうでもよいもの、却って害があるものも含まれているように思います。元来「規制」というものは、「独占の弊害を防いで、自由で且つ公正な競争を実現する為にどうしても必要な場合にのみ限るべき」ですから、実際の運用には慎重を期してほしいと思っています。