雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

ネット権について今さら

自民党の動きが急らしく、あまり勉強してなかったのを改めて調べてみたのだが、ネット権って変だね。僕は個人的に消費者余剰の最大化を標的に制度の最適化を図るべきで、二次創作を抑圧したり、取引を制限するような制度では本末転倒と考えている。
そういった点でネット権の思想に首肯するところもあるが、新しい報酬配分制度のプレーヤーを既存のメディア事業者に限ることは利益相反もあるし、新規参入を阻害する虞がある。ネット権なる特別な権利を設定するよりは著作権そのものを触るのが筋だし、報酬分配業者は規制緩和に逆行する免許制ではなく透明性の高い登録制にすべきだし、人格権に由来するところの差し止め請求権はなくすべきではない。
著作権法を触るとして、配信や二次創作にかかる取引費用を最小化する観点から、単に配信役務提供者と二次創作者に対して責任制限を課せばいいのではないか。自由に配信と二次創作をできるようにする代わり、差し止め請求や報酬請求に対して誠実かつ迅速に対応する限り、民事上の責任を制限する。その場合の権利者であることの挙証責任は請求者側に負わす。
かかる責任制限を受けるために売上見合いの二次使用料準備金の供託を義務付け、数年以内に報酬請求がなかった供託金の一定割合をコンテンツ振興のための公益目的に利用する。公益事業者は登録制にして財務や事業報告書の公開を義務付け、寄付獲得を巡って競争させる。この仕組みなら二次創作を推進しつつ、権利者の著作者人格権や差し止め請求権を残せ、メディア事業者と制作者との力関係もバランスできる。
商業著作物は登録制でもっと厳しく保護する枠組みをつくり、特許と同じように年々増額される手数料を取ってもいい。著作権よりも厳しい保護を求める著作権者は個別に契約を結んでもよい訳で、民間ベースの契約の普及を促す効果も期待できる。

一つ。ネット権を持つ事業者は制作者への正当な対価の支払い義務を負うと言うが、これは欺瞞である。最初から利用する権を付与された事業者と、利用される定めを負わされた制作者の間に、「正当な対価」など設定され得ない。

もともと著作権法は、18世紀にできた出版業界についての「業法」だから、そういう業界の区分に意味がなくなった現在は、一般法である民法に吸収すべきである。著作権法は強行法規ではないので、ライセンス契約で上書きできる。(文化庁ではなく)経産省が合理的な契約のガイドラインを提示し、創作者やユーザーがそれを討議して、CCライセンスのような民間ベースのライセンスを作ってはどうだろうか。