雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

的外れなこともいってくれ。それだけじゃ終わらせない

シアトルから成田について、福岡に向かう飛行機の待合室。帰国早々ブログをチェックしたら何だかid:shi3zから呼ばれている。明日からの授業は実験的な取り組みだから、成功するかどうかなんて分からないよ。ただ、彼らは僕やid:shi3zのブログを読んでいるようだし、そういった意味で講義はもう始まっている。試行錯誤して助け舟を出し合いながら、何を伝えるか、どう伝えるか、意味があるのか、悩みつつ真剣勝負で講義を進めていこうよ。

馬に大企業での処世術を教えるというか、アメンボから水泳を習うというか、どちらにせよなんとも的外れなことを言うだけで終わってしまいそうな気がする。
いいのか、本当に。id:mkusunok

僕が講義の取り纏めを任された際「高度ICTリーダー特論」なる講義名は決まっていて、去年の夏合宿で先生方と中身を詰めた。月並みなリーダーシップ論にするつもりはなく、ケースメソッドとか、交渉術のようなことを学ばせてはどうかとか、様々なアイデアがあったけれども何せ教材がない。求められるリーダーシップ像をブレストしてみると結構ばらつきがあった。
SI、組込系、パッケージ、ゲームといった業界や、管理職か技術リーダーシップか経営者かでだいぶ話が違う。急遽id:shi3zid:lalhaid:masaysに相談したのは、生々しく多様なロールモデルを示すために、経団連の50代大企業管理職だけでなく、30代のベンチャー社長や官僚、業種もゲーム、パッケージ、コンテンツと幅を持たせたからだ。歳が近く活躍している講師陣をみれば、学生も親近感を感じつつ少しは焦るだろうし、東京はともかく福岡郊外には、そういった刺激が決定的に欠けているようにみえた。
2日半の集中講義という限られた時間で考えた場合に、多様なロールモデルを示せるだけでも学生は刺激を受けるだろうし、これまでと違った視点で長丁場のキャリアを捉えられるようになるんじゃないかな。みんな修士2年で就職先も決まっていて、今すぐ進路を決める立場にないけれど、自分の10年後を考えると漫然と仕事をこなすだけじゃなくて、自分から勉強し、視野を広げるための意識的な努力をするかもね、とか密かに期待している。
いまも何を教えるかid:shi3zが悩んでるけれども、僕だって教壇に立つときは何が伝わるように教えるか真剣に考えるし、教えることを通じて学ぶことってすごく多いんだよね。しかも今回は学生に混じって百戦錬磨の講師陣も講義で突っ込みを入れてくるだろうから、的外れな話から始めたって講師の立場を相対化して、その話が学生にどう関係してくるか議論を収束させることもできるし、学生だけでなく僕らも得るところがあるんじゃないかな。
これまで月並みな学歴論争が続いているけれども、既存の大学教育が直面している隘路に対して冷静に評価すると同時に、そんなに時代が変わったというのなら新しい時代へ向けた教育の在り方を模索しなきゃならない。米国のビジネススクールだって始まってから認知されるまで何十年もかかっていて、結局のところ卒業生が栄達したかで評価される実情がある。
明日からの講義に意味があったかどうかは、微視的には来年度以降どうしていくか、長い目でみれば講義を受けた学生の10年後、20年後の進路に少しでもいい影響を与えたかで事後的に判断されることになるだろう。これまでのやり方に限界を感じているなら、新しいやり方を試し模索するしかない。それはid:shi3zが普段やっているプロトタイピングと一緒で、うまくいったりいかなかったりする。新しいことをやるのだから、全て満足のいく結果となることの方が少ないだろう。けれども試行錯誤しなければ何も産まれない。今ある大学や学歴に意味があるかどうかじゃなくて、どうやって意味のある教育を提供できるか模索すべき時期にきてるんじゃないかな。