雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

5年以内にQITOからスーパークリエイターを出すために

わたしが講義を担当している九州大学の社会情報システム工学コースから初めて卒業生が出るということで、今年も金・土とQITO+経団連の合宿に行ってきた。かねてid:shi3zも自腹で来ているし、彼を講師に誘った私がサボる訳にはいかず、クレジットカードで貯めたマイルはたいての自腹出張。前回も過激な発言にハラハラさせられたが、今回さらに彼はやってくれましたよ。

学生のモチベーションをどうすれば維持させることができるか。
お歴々は嘆いていたが、実際に学生に接すると、肌感覚では彼らも捨てたものじゃないと感じた。やる気はあるのだ。
ただ、一体全体なにをどう頑張ればいいのか、QITOの教育プログラムの方がむしろきちんとした道筋を示すことに成功していない。

わたしが担当する分科会を手堅くまとめているところ「助けてくれよ」と清水さんが乱入。早々に切り上げて様子を見に行くと、真夜中ビールで酔っぱらいながら「おい多態性を何に使うか説明できるか」「レジスタの使途は」「そんな教科書的な説明を聞きたいんじゃないんだよ」「お前ちゃんとコード書いてんのか」と教え子に絡みまくる清水さん。ヒヤヒヤしながら話を分科会の議題に戻そうとすると「お前はプログラマーじゃないんだから」と今度は私に矛先が。そっちが助けてっていうから様子をみにきたのにさー。
まあ話を聞くと確かにコードを書く量が決定的に足りていないし、責任者でてこい!けれど大学院のFDを巡る議論に関わって痛感したのだが、大学院の修士課程が2年あるといったって1年の終わりから就職活動が始まって、就職が決まれば残りの大学生活なんて消化試合のようなところもあって、修論にせよPBLにせよインターンにせよ、産業界からの期待であれもこれもと詰め込んだらどれも中途半端になってしまう。企画やら要求定義、詳細設計とやっていくと数ヶ月なんてすぐに経ってしまうし、身を入れてコードを書く時間なんて大して取れない。中学や高校の日本史で、碌に近現代史を教えられないのと同じ構造だ。
これからFDをどげんかせんといかん!って話はさておき、学部を卒業した段階で、Cのポインタを正しく理解し、Javaでスレッドセーフなコードを書き、アセンブラを自分で書くかは別にコンパイラの吐いたコードを眺めたことくらいあり、データベースのスキーマなら第三正規形まで正規化できて、セキュリティについてBuffer OverflowやXSSSQL Injectionといった典型的な脆弱性について概念と手口は知っているくらいには達していてくれないと、実質1年という短い期間で如何に効率的な実践教育を施したとしても、経団連の期待しているような高度IT人材に育て上げることは難しいんじゃないかな。
で、学部教育に手を突っ込むことは難しい大人の事情があるにしても、学生さんが自主的なやる気を持って学部時代から研鑽していれば、何人かは未踏に採択される程度まで育て上げることは不可能じゃないと思うんだよね。少なくとも私が取りまとめている高度ICTリーダー特論では、スーパークリエイターのid:shi3zはじめ、Galapagosで未踏に採択されたid:lalhaもいて、わたしもid:kensuzukiPICSYを手伝ったことがあるし、必要があればさらに充実した未踏経験者を集めて指導体制をつくるよ。
みんな忙しいから頻繁にQITOへ行く訳にはいかないけれども、メーリングリストをつくり、課題図書を出して、フォローすべきBlogとPodcastを指定し、学生の自習ブログをチェックして突っ込みを入れる。九大工学部にきたら未踏を目指してQITOに行くんだ!と心に決めて、学部1年から俺たちの私塾で指導を受け、学部在学中にひとつでいいからWebサービスとかiPhoneアプリとかXbox コミュニティゲームとか何でもいいからリリースして、天下一カウボーイ大会で大勢の先輩を前にプレゼンする。
学部時代にそこまで研鑽できたら講師陣が徹底的にフォローし、修士では未踏の応募支援とか、もっと視野や人脈を広げられる特別カリキュラムを用意する。昨年M2で実施した集中講義を来年から順次M1向けに切り替えて学部からの聴講生も認める方向で調整しているし、この私塾のオフ会的な側面を持たせてもいい。優秀で意識の高い学生が集まっている証拠を示せれば、もっと豪華な講師を呼びやすくなるしね。
日本でもJ07とか本格的に学部の標準カリキュラムが検討されているけれども、口を開けて学部教育の改善を待つ余裕はない。学生だって自分を磨き、いい仕事に就きたいと考えているはずだから、1年といわず学部1年から5年間を使って徹底的にしごいてはどうか。未踏に採択されたらPBLの単位として認めるとか、JTPAのカンファレンスに参加してレポートを書いたら単位として認めるとか、徹底的に学外のリソースも活用して学生さん達に自分を磨く機会を提示できるといい。優秀な学生には仕事を出せれば、アルバイトに無駄な時間を使わずに済む。プロジェクトのゴールは例えば3年以内にQITOから未踏に採択されるプロジェクトを出す、5年以内にスーパークリエイターを輩出する、10年以内にIT業界で名の知れた卒業生を出す、というのはどうか。
きっちり2時間で切り上げた私の方の分科会では卒業後の追跡調査について議論したんだけれども、卒業から1年後に採用企業と卒業生の両方に簡単なアンケート調査を実施することと、学生が自主的にLinkedInへ登録することを推奨して経歴の追跡調査を行うことに決めた。LinkedInへの登録そのものが英文履歴書を書く素晴らしい訓練になるし、人材の流動性が大きいIT業界で様々な企業に散らばる同期生や講師陣との緩やかな紐帯を維持することは、彼らのキャリアにとって大きなプラスとなる。さらに卒業生の経歴を追うことができればキャリア教育の格好の題材となるだけでなく、就職活動でOB訪問をサポートする強力なインフラとなる。知り合いの履歴書は非常に参考になるのだから、本来なら卒業時点ではなく就職活動前からLinkedInを活用すべきではないか。
という訳でスーパークリエイターを輩出するまでの道のりは遠いけれども、コースも講義も卒業後のフォローも忌憚なく議論して着々と充実させ、議論の経過やベストプラクティスは積極的に公表していきたい。

おまけ

写真はモニター中のCASIO Exilim EX-Z400で撮影した熊本城と、id:shi3zと今日の昼飯を食った熊本上通り山水亭の店舗とラーメン。昨年いった時は行列ができていたのだが、今日は昼どき1時頃だったにも関わらず並ばずに入ることができた。Eye-Fi Shareではてなfotolifeにアップロードすると、ダイアリーに簡単に貼り付けることができる。
EX Z-400のEye-Fi対応という表記が気になっていたのだが、デジカメがEye-Fiとして認識してアイコンを表示し、アップロード中にアニメーションが表示されたり、電源を切ろうとすると警告が出るとか、けっこう芸が細かい。米国でMovie対応のEye-Fiが発表されたのが悔しいんだけれども、EX-Z400で撮ったHD動画をYoutubeに自動アップロードできるか気になるところ。容量を25GBに拡張したWindows Liveフォトにも対応して欲しいなあ。