雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

携帯SNSサイトは意外と危険ではないかも

今日18時30分からデジタルハリウッド大学セカンドキャンパスで行われるコンテンツ学会の研究会で「世界のネット・コンテンツ規制と違法・有害情報対策の動向」と題して講演する。昨年話題となった児童ポルノ等のブロッキングの動向、青少年ネット規制法、硫化水素自殺、出会い系サイト規制などについて、これまで大学や学会で講演してきた内容を網羅的に取り上げる予定だが、ちょうど8月に新しい数字が出たのでブログでも簡単に紹介したい。
今年上半期の出会い系、出会い系以外での犯罪被害実態について。2008年度に初めて少年犯罪被害者数で出会い系サイト以外が出会い系サイトを抜き、その差は拡大しているところだが、これを検挙件数で比べると別の実情もみえてくる。

まず検挙件数を比較すると、今なお出会い系サイトの件数がそれ以外よりも多い。これは出会い系サイトの方が累犯の割合が高いことを示唆する。個票がないためここからは推察になるが、出会い系サイトに多い児童買春について、ひとりの被害児童を補導して携帯電話などに登録されている複数の顧客を芋づる式に挙げる捜査手法が影響している可能性がある。また、出会い系以外の方が青少年保護条例違反の割合が高いが、金銭が介在しない青少年保護条例違反の方が児童買春と比べて特定の相手方と関係していると推察される。出会い系以外では重要犯罪・粗暴犯罪の数も少なく、事件性が低い事案の割合が大きいことも分かる。

また福祉犯全体でみた場合にネットが絡んでいるのは全体の2割ほど、そのほとんどが携帯電話からのアクセスで、PCからのアクセスでの被害は全体の1%を切る。ここ数年の情報機器の普及や、加熱しがちなネット犯罪被害の報道を考えると意外なことではないか。少年犯罪被害そのものが減少トレンドにあることを考えると、ネットや携帯電話が少年犯罪被害を助長しているとは必ずしも言い難い。

実は数字のトリックもあって、青少年保護条例違反は暗数が多い。ネットでの捜査能力を持つ県警は限られるため、多くは街で補導された少年からの聞き取りでネット犯罪として計上されている公算が大きい。従って捜査人員を投入してネットへの書き込みも精査すれば、出会い系サイト以外での犯罪件数を積み上げる余地は大きい。
裏を返すと統計上の被害児童数や検挙件数は、ネットで実際に未成年と大人が出会う数ではなく、各県警が街で少年を補導できる数に従属している可能性があり、各社がサイトの安全対策を強化して実数を減らしたとしても、統計には意外と反映されない可能性も考えられる。