雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

未来のリトル閻魔様にヨロシク

神田さんが気の毒なことになっている件、他人事ではない。相手と面と向かっていたり今の段階で何か論じる場合は人間ってそれなりに気を配れるけれど、数年前のコンテクストで伝聞調で何を書いたかまで問題とされると何がどう引っかかるか分かったものじゃない。が、伝聞であれ記事として書けば編集者から「それウラ取ったの?」とツッコミが入って然るべき記述だし、ちょいと調べれば誤解の解ける底の浅い与太話ではある。神田さんもジャーナリストを標榜するなら感情に任せてエントリーを起こす前にググってWikipediaくらい確認しても良かったのではないか。

ボクは、みなさんが知っているとおり、原子力反対派でも賛成派でもない。ただ、イラクに行く際に人から忠告をうけただけの話だ。まちがっているのならば、訂正いただきたいだけだ。
6年前のたったの「82文字」が原因で、東京電力さんの仕事はキャンセルされてしまうのだろうか?

劣化ウランはウラン鉱石を精製した後の純粋ウランから、ウラン濃縮して核燃料としての低濃縮ウラン燃料が得られた後の濃縮クズであり、原子力発電所から出される廃棄物とは関係がないウラン濃縮の廃棄物である。

ライターとして仕事をしつつブログも綴る中で切実に感じるのだが優秀な編集者ほど得難いものはない。ブログの調子で書き飛ばしていると、事実確認の抜け漏れや誤解を招く表現って少なからずある。いろいろ指摘してもらいながらウラを取って危なっかしい記述は消したりボカしたり。新聞社系の出版社やら新聞記者上がりの編集者は割と緻密にやる。いい編集者を育てるには、いい記者を育てる以上に時間や手間暇がかかるのではないか。その辺もともとのマスコミとソーシャルメディアとの決定的な違いではある。
ところで先方も神田さんの素性調査のために過去のブログ全て読み通すほど暇じゃなかろうし、きっと「人名ANDキーワード」で検索して引っかかったのだろうし、ケチをつけたのがスポンサー担当者か代理店か番組スタッフかは分からない。だから、この時点でスポンサーを責めるのは戦術的に疑問を感じるところだが、身体検査を出演依頼の前にやっていれば問題は起こらなかっただろうし、後から断るにせよもうちょっと気の利いた断り方があるだろうし、彼は別に原子力について強硬に反対している訳でもないのだから穏便に出演いただく手もあったのではないか。
しかし昔は図書館まで行って相当の労力を割かねば確認できなかった執筆や報道の履歴が、いまやブログであれWeb媒体で発表した記事であれメーリングリストへの過去の投稿であれ匿名掲示板での風評であれ、手元で検索すれば10年以上も前のものから一覧できる。人間だから恥ずかしい過去やら未熟な認識もあれば、執筆時点でそれなりに目端が効いていても結果的に誤りだった予測だって出てくる。取り消せない過去が現在や未来に与えるリスクは、かつてなく大きいのではないか。
今回の件は番組スタッフの正直と神田さんの蛮勇で偶然にも可視化されたが、穏便に済ませたら済ませたで世の中こうやって見えないところで自分の人生の可能性が勝手に書き変わっているんだろうなと痛感させられた。じゃあブログを書かない方が実名を出さない方が得だったのだろうかというと難しいトレードオフだ。
人生を切り開く上ではノミネートされることと落とされないことの両方が必要で、彼の表現活動は彼が様々な表現や活動の機会にノミネートされる上で大きな力となってきただろうし、今回はたまたま巡り合わせが悪かったのだろう。あら探しされ始めればキリがないにせよ、裏取りの心掛けひとつで悲劇を回避できることもあるし、悲喜こもごも足し合わせてプラスになっていれば上々ではないか。
しがない実名ブロガーとしては今回の教訓を他山の石として、デリケートな問題を取り扱う場合は可能な範囲で裏取りし、けれども様々なリスクに萎縮せず活動を続けていきたい。お声がかかるのも問題が起こるのも、良かれ悪しかれ読まれている訳で。