雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

5年ぶりにIPv6論争の季節がやってきましたよ

池田先生がTeredoと地域IP網問題をごっちゃに論じているところへ,小飼さんは「IPv6ではマルチホームが当たり前」という素っ頓狂な反論をしている.清々しいすれ違いっぷりである.
池田先生の懸念するようにWindows VistaではIPv6アドレスが最初からついているが,これはTeredoというIPv4網上でIPv6をオーバーレイする仕組みで,実はWindows XP SP1 Netpackから普通に使われている.threedegreesとかインストールすれば有効になっているはずだし,展開してかれこれ3年になるので,そこそこ枯れた技術である.address prefixをみればTeredoの通信とNative IPv6の通信とは区別できるから,Teredoがdefault enableになったからといって,IPv6 enableな網で問題が起こることはない.teredoホストとはteredoアドレスで話し,native IPv6ホストとはnative IPv6ホストで話すので,特に問題は起こらない.
一部の方々が懸念されているのは,小飼さんの考えている一般的なマルチホームの問題ではなくて,NTT東西の地域IP網でIPv6が使われていて,こちらはNTT法の絡みで県域で閉じているから何か問題が起こるかも知れないね,という話である.優先順位が変わって影響を受けるのはIPv4のglobal connectivityがあってIPv6だけlimited connectivityしかない場合で,こういう環境での利用はそれほど多くないと推察するのだけれど,この場合もIPv6での接続に失敗したらIPv4にフォールバックすれば,ちゃんと動くような気もしないでもない.個別には色々なケースがあるだろうから試してみて,問題があれば技術的に正しい解決方法をとればいいんじゃないかな.その方向で関係者は奔走されてるはずなんだけどな.よくわからないのはglobal connectivityがないならglobal addressではなくsite-local addressを使うべきであって,その辺の整理がどうなっているかは気になるところではある. (4月25日追記: id:otsuneさんがコメント欄でご指摘のように,Site-local addressはRFC3879で廃止されていました.ではどう実装するのが正しいかというと,よく分からないのでこれから勉強します)
とゆー訳で事実認識で微妙に違いはあれど,池田先生の「要素技術に政府が介入するとろくなことにならないという好例」小飼さんの「今までのIPv6論議は、あまりにGeekよりだった」という結びはほぼ同じことを問題にしていて,私も同感である.IPv6の必要性そのものについてはアドレスの消費ペースは思ったより早いようだし,仮にアドレス枯渇問題がなかったとしても網構成を柔軟に再構成する上でIPv6は有用であって,放っておいても遠からず普及するのだろう.そういう意味で振興行政のネタとしては,いささかセンスの悪さを感じる.
こういう議論は高度に政治的であるにも関わらず結論が趨勢に対して何ら影響を及ぼさないのであって,水掛け論に参加しても火の粉が飛んでくるだけでありまして,当事者であるにも関わらず,そんなとこにノコノコとやってくる俺はたぶん酔っぱらっているだけなのだろう.

総務省の委託でインテックネットコアなどが調べたIPv6の普及度調査の結果が、ウェブサイトに出ている。それによれば、図のように、トラフィックは2002年の2.5%をピークとして減少し、今年は0.1%にも満たない。
(略)
Windows Vistaには、出荷時からv6のアドレスがつく予定だが、これは混乱のもとになる。NTTやIIJなどの一部のv6専用サービス(閉じたネットワーク)ですでにv6のアドレスをもっているユーザーは、1つのホストに2つのグローバル・アドレスをもつことになるからだ。ローカルのサーバにアクセスしたらVistaのアドレスで同定されてはじかれる、といったトラブルが起こるおそれが強い。これはマイクロソフトVistaの仕様で複数のv6アドレスの優先順位を決めるなどの対応をするしかないが、マイクロソフトはその気はないという。
(略)
あるとき某省の審議官にv6についてのレクチャーを求められ、「v6はv4と完全互換ではない。v4のサイトからv6のアドレスは見えない」と説明したら、審議官が「それは本当か」と驚いていた。こんな初歩的なことも知らないでv6に100億円以上の補助金をつける無謀さには、こっちが驚いた。v6をめぐる混乱は、要素技術に政府が介入するとろくなことにならないという好例である。

複数のグローバルアドレスを持つなんて、IPv4時代でもいくらでもある。実際無線LANにも有線LANにも接続しているパソコンは、その時点で有効なアドレスを2つ持っている。IPv4が希少となった昨今では、これらのアドレスはたいていの場合プライベートアドレスではあるだろうが、すでに一つのホストが複数のIPアドレスを持つなど当たり前の時代である。
(略)
ただ、やはり留意して欲しいのは、その100億円をどう配分するか。今までのIPv6論議は、あまりにGeekよりだった。その一部は、IPv6への懐疑 --本当に別の手はないのか--だとか、「くらしためのIPv6」--IPv6がどうくらしに役立つのか--という点にきちんと回るようにしてもらいたい。技術面に関しては、すでにIPv6は安定を通り越して「枯れた」といってもいいのだから。これらの点においては、失礼ながら村井先生をはじめとする WIDEの各位はあまりいい仕事をしてこなかったと思う。というよりその能力が欠如していたというべきか。こういうことはもっともっと若い世代に丸投げしていいのである。

要はガクモンな仕事って少ないんだよ,きっと

僕は就職活動なるものをやったことがないんだが,同じゼミの学生たちが就職活動しているのをみて不思議な印象を持った.金融論のゼミだったから銀行/証券志望が多い.不良債権問題が云々とか,金融ビッグバンが云々といった時代.調べたり議論していると銀行のビジネスモデルが揺らいでいるとか,不良債権が大変だとか,新興市場が出来て間接金融から直接金融への移行が加速とかそういう話をするんだけど,就職活動に入った瞬間,みんなそういう銀行を受けるんだよな,これが.金融論を学んで金融界に行くのはまぁ素直なのかも知れないけど,お前らゼミで議論してたことは何だったんだ?とか突っ込みたくなった.けれどもこれは学生のせいだけというよりも,会社が就職活動をそういうものにしている,というのもあるんだろうな.
ところで雇用の流動性について,企業はだいぶ覚悟しているんじゃないかな.実際,引き抜かれちゃってる訳で.問題は覚悟すると企業行動がどう変わるかということで,昔はデキる奴には海外留学させたり手塩にかけて投資した訳だけど,今どき下手に外の世界をみせて学位のような武器を渡してしまうと逃げられちゃうから,虎の子の優秀な社員を箱入り娘っぽく腐らせちゃうようになった気がする.だから,お互いに流動性を前提として行動するのが会社や従業員,広く社会にとって有益かというと,多くの経済学者はそう妄想しているけれども,教育投資とか様々な面で合成の誤謬がある気がする.3年半で居心地のいい会社に「飽きた!」とかいって三行半つきつける奴がこんな心配するのは筋違いだが...
けれどもまぁ,経済が成熟すると,組織内部で「仕事で報いる」ことは難しくなるから,それなりに上昇志向のある奴はjob hopせざるを得なくなるんだろう.流動性を前提に,ちゃんと中長期的な視野を持って企業経営/人材開発ともにうまく回るための共同幻想のようなものが必要になりそうな気がする.

そういう勉強が大学の学問といかにかけ離れているかっていうのは大学一年生の前期でわかりそうなものだけど、それをわからず、同じノリで就職活動してしまってる。おまえら四年で何を勉強した?

「まっさら」の新卒(今時まっさらの新卒なんて、地方の高卒にしかいないと思うけど)を正社員で採用したいと言う時、将来的にさせたい業務はルーチン業務じゃないやん。もしルーチンやったら、それをしてくれる労働者の終身雇用をまもらなあかんと思うけど。幹部候補に将来なってもらいたい学生なら、会社に一度や二度首切られても、外部求人市場の価値の落ちない人間になってもらいたいやろから、雇用の流動性ぐらい学生の側もそれ以上に企業の側も覚悟しろよ。

次の10年へ向けて何をやるか

(註: 状況と心境に変化があり,辞めるかどうかは少しのあいだ様子見です.という訳で受け皿づくりはお休みしますが,これからやろうと考えていることについては変わらないのでエントリは残します.ご心配おかけしました)
ぼくが社内外で「6月末に会社を辞めます」と宣言したことについて,あちこちでいろいろな反響をいただいた.だいたい聞かれるのは

  • なぜ辞めるの?
  • 次どこにいくの? 何をするの?
  • 一番やりたいことは何?
  • うちに来ない?

といった事柄である.
こういった予想されるFAQに対してTalking PointsやRude Q&Aを用意せずに辞めることばかり触れ回ってしまったこと,しかも聞かれても当意即妙に答えられなかったことは,元マーケ/渉外としては大きな手落ちであって,この3年半に何を学んできたのか!と,自分でも頭を抱えてしまう.まぁ他人のためにTalking Pointsをレビューすることはあっても,僕自身は脚本にあまり頼らなかった/頼れなかったのだが.という訳ですでに手遅れの感はあるが,いま考えていることについて整理してみる.

なぜ辞めるの?
そろそろ飽きたから.
もともと入社の時点で「君にサラリーマンが勤まるの? どれくらいいるの?」と聞かれると,だいたい「石の上にも云々といいますし」と答えていた.ちょうど今年が4年目であるから,時期としては予定通りというか,少し遅れ気味である.とゆー訳で昨年から微妙にそわそわしていたのだけれども,昨年はボスを始めとしていろいろな人が辞めたので,とても僕が辞めると切り出せる状況ではなかった.ちょうど人の入れ替わりも落ち着いて,来期の計画を立てている中で,そろそろ潮時かなという感じがしてきた.
ここ1〜2年で役所対応にしてもコミュニティとの繋がりにしても,いろいろな部門で陣容が厚くなったし,僕がいなくなったところで困ることはないだろう.僕としても英語コンプレックスを多少は克服し,退社までにそれなりの成果を出して,会社でできそうなこと,できなさげなことは分かって,やりたいと考えていたことは一通りやらせてもらった.いろいろな部門と接点ができたので,今後なにか仕事するにしても,生かせることがあるかも知れない.

次どこにいくの? 何をするの?
いろいろな話があるけれども,まだ決めていない.秋以降の活動について,本を書くとか研究会を組織するとかベンチャーの手伝いをするとか,いくつかは固まりつつあるので,それらと両立するかたちで,もう少し食い扶持が必要だよね,と悩んでいるところ.
基本的にはフリーランスを考えているのだが,健康保険とかのことを考えると放し飼いにしてくれるんだったら,どこかしらに所属した方がいいかなという気持ちもある.よく起業しないの?と聞かれるんだけど,これまでちゃんとした部下を一度も持ったことがない僕としては,今の時点で起業することはtoo riskyということで却下.一緒に仕事するんだったら,財務と経営に強いひとの背中をみつつ,これまで培ってきた技術渉外とかのノウハウを活かしてエッヂの効いた仕事ができればいいな.

一番やりたいことは何?
日本国内で新しいことをやっている会社で,事業開発とか渉外の仕事をこなしつつ,IT政策に対して自由な立場で発言したい.このblogでも書いているような,業界構造とか技術戦略についての諸問題を解く上で鍵となるような立ち位置をつくれるのが理想的.共依存にならない範囲で組織に属し,時代の流れを変えるような仕込みをしたい.
40代後半くらいには物書きとして経済的に自立して放浪できるように,組織中心の商流を個人に引き寄せるような社会基盤を整えたい.昨日おもいついた「はてな登龍門」もそういうアイデアのひとつで,あれがちゃんと動けば世界を放浪しながら好き勝手にものを書いていても食える,かも知れない.
あと,働き始めてずっとネット上のサービスばかりやってたんだけど,やっぱり日本から世界に出て行くには,あちら側の世界だけでは難しくて,もっと基礎研究とかものづくりに近い部分の技術革新を担ぐ必要があるかな,という問題意識がある.

うちに来ない?
いまのところ7月以降の受け皿についていくつかのアイデアはあるけれども,決まっていない.いい話があれば乗れるし,仮に所属しなくても様々な形で恊働できるかも知れないので,ご連絡お待ちしてます.