雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

有害サイト規制の経緯を学ぼう

民主党の有害サイト規制法案に対する小飼弾さん中島聡さんの反応をみていると「表現の自由」なり「通信の秘密」を前面に押し出したナイーヴな反応に終始しているようにみえる。けれども未成年が対象であれば、サイト削除義務もフィルタリング義務も憲法で禁止された検閲には当たらない。*1有害サイト規制を巡っては以前から各省で活発に研究されており、議論はもっと各論に落ちている。各国の動向や法執行に当たっての課題も一通り整理されているので、関心のある方は過去の報告書を一読されることをお勧めする。

2006年の議論では政府が前面に出ようにも様々な課題があるので民間主導で対策を進めることになっていたのだが、民主党が党内調整を勧めている新法案は、当時の議論を充分に踏まえていない疑義がある。報道の通りだとしたら、規制推進派以外の利害関係者とも議論して、きっちり勉強しているかどうか疑わしい。そして僕が懸念しているのは、今の政局が彼らの追い風になるかも知れないことだ。
好意的に解釈すれば、これまで行われてきた民間主導の自主規制が充分に効果を上げておらず、政治主導で踏み込んだ対応を促しているのかも知れない。民主党の党内手続きが、どれほど民主的に利害関係者の意見を吸い上げられるかについて、私はよく分からない。内容が荒削りであることをみるに、一部官僚を巻き込んで法案としての体裁を整えようとしている一方で、業界関係者にまで充分に網を張って論点を集約するには至っていないようにみえる。平場での議論が煮え切らないことにしびれを切らし、政治主導で一気に流れをつくろうと裏で耳打ちしている勢力があるのではないか。
いま僕が危惧しているのは、ねじれ国会の打開へ向けて自民党としても何かしら民主党と組んで政策協議の実績をつくるべく無難な政策玉を探している環境にあって、有害サイト規制は自民・民主で合意を得やすい領域ではないかということだ。今は民主党内の一部での議論に過ぎなくとも、これからトントン拍子で検討が進む懸念がある。
有害サイト規制に限らず二大政党制時代の民主的な政策形成過程は、まだ確立されていないのだろう。けれども僕らbloggerはじめネット界隈の人々がネットでの自由を守るために何をできるのか、外野から騒ぐだけでなく、踏み込んで考える必要がありそうだ。

*1:未成年を識別する技術的方策の目処がつかないままWebサイトに対する未成年の有害情報アクセス制限義務を課した場合、萎縮した事業者が成人に対してまでコンテンツを実質的に提供できなくなる可能性は別途検討する必要がある。