雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

ブロッキングの必要性を議論する前提

現段階でブロッキングには反対だ。検閲そのもので、フィンランドのように運用実態のおかしな国もある。設置しているサーバーをDNSで引けなくしてしまう訳だが、技術的手法が稚拙この上ない。効果が上がっているとは、どういう統計なのだろうか。アクセスを難しくするのだから、捕捉できるアクセス件数が減るのは当たり前で、サンプリング社会調査で物理的な児童虐待そのものが減っていることが裏付けられなければ意味がない。

警察庁の委託でサイバー空間の有害情報の通報を受けている「インターネット・ホットラインセンター」(東京都港区)が昨年1年間、ネット上で確認した児童ポルノ1600件のうち、削除要請に応じたのは300件にとどまることがわかった。
日本では児童ポルノをパソコンに取り込んだだけでは処罰されないため、過激な画像がネット上に出回る原因になっている。このため法規制とともに、対象サイトへの接続が出来なくなる措置を導入すべきだとの声も上がっている。

米国では単純所持検挙者の85%が実際に児童虐待をしているというのだから、シーファー大使は日本にプレッシャーをかける前に、米国でのブロッキング実施を提言すべきだろう。そんな法律は米議会で通らないだろうし、憲法違反で執行停止となるだろうが。日本で何が重要な政策課題で、何をやるべきで、何をやるべきでないかは、認知件数・検挙件数や体感治安といった、警察がいくらでも操作できる数字ではなくて、JGSSのような社会調査を基に議論すべきだ。そういった統計も整備せず、リークでマスコミに記事を書かせ、通したい法案に合わせてキャンペーンを張るような手口は如何なものか。警察庁は善意で仕事しているんだろうし、どちらかというとパブロフの犬のように警察リークに飛びつくマスコミの責任ではあるのだが。

同センターによると、昨年、児童ポルノ絡みで通報を受けて発見した不法サイトは約1600件。うち3分の1にあたる約540件は海外のサーバーが使われていたため、サイトの開設者らに直接、削除を要請できなかった。
残りは国内のサーバーを使っているケースだったが、開設者を特定できても同センターの削除要請には強制力がないため、実際に削除を求めた約500件のうち、応じたのは約300件だけで、残りは閲覧可能のまま。さらに削除が確認されても類似のサイトがすぐに開設されるのが実情で、同センターの吉川誠司副センター長は「我々が把握しているのは氷山の一角ではないか」と分析する。

国内のケースについて、違法情報の削除が今よりも厳しい義務になることは止むを得ないのではないか。これは悪意ある事業者、無責任な事業者が少なからずいることの代償だ。
また、海外の違法情報についても、ホスト単位で対応し、健全情報へのアクセスまで制限してしまう、手荒な北欧式のISPによるDNS方式には絶対反対だが、違法情報をディープリンクレベルでポイントして第三者レイティングでフィードし、PC出荷時の設定でかかるフィードを参照するようにして、それを外して違法情報を収集目的所持を行った者に対して法執行で対応することは、批判し難く一定の透明性を確保できるとも考えられる。
その場合も北欧の轍を踏まないように、ブラックリストに対する適切なガバナンスを働かせる仕掛けは考えておく必要があるのかも知れない。技術的方策を検討する前に、そのための事実確認に関する情報を十分に得られない現状には問題があり、印象論ではなく議論のベースとなる証拠を揃えるのが先だが。