雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

ITの6年前、そして6年後

明日ちょっと2015年を目処とした将来像とか話すんで頭の整理をしている。2015年って遠い先のようで、たったの6年後。6年で何ができるだろうと考える前に6年前を思い起こすと、ちょうど今の会社に転職して製品マネージャとしてサーバー製品の立ち上げでドサ周りとかやってたっけ。あれから6年も経ったのだから歳を食った訳だ。
この6年を振り返ると意外とFTTHとか3.5Gは普及して、公衆無線LANは駄目だったが無線LANはDSのお陰で大衆化した。音声ARPUは快調に減っているが、IP電話は前評判ほど破壊的じゃなかった。AV系ホームネットワークは流行らなかったが、1万円台のHPのインクジェットプリンタにまで無線LANチップが載っている。CPUのクロックが2〜3GHzで頭打ちして、ノートPCに載せるメモリは2GBで頭打ちして、けどフラッシュメモリは劇的に値崩れ。未だに店頭でWindows XPをプレインストールしたPCが売っているとは予想外。1円ケータイは数万円と高くなって、20万円くらいした小型ノートがeモバとセットなら100円で買えるようになった。液晶がプラズマに勝ち、有機ELSEDの出番があるかは分からない。燃料電池が流行る見込みは立たない。iPodが爆発的に売れてAppleが復活した。SCEが息切れして任天堂が復活した。据え置き型ゲーム機の市場は長期漸減となっている分を携帯ゲーム機が補っている。ホリエモンがフジテレビを買おうとして失敗し、楽天はTBSに手を出して火傷した。オークションのDeNAがケータイゲームの会社になり、mixiGreeといったSNS大手が創業3年で上場して大企業に。お財布ケータイは急速に普及したが、電子政府はあまり使われていない。ホビーロボットは少し流行ったが、ホームロボットが流行る気配はない。ネット広告が雑誌を抜き、もうすぐ新聞を抜き、落ち目のテレビ広告に迫っている。IPTVは流行らなかったが、Youtubeニコニコ動画が世界を変えた。P2PとかGridの分散技術ではなく、クラウドの大規模運用技術が戦場となっている。メンテナンスされなくなったWinnyで、今も個人情報が流出している。
思ったほど変わらなかった部分と、なんか激しく予想を裏切った部分とが混在している。市場や利用シナリオは予想を超えて激変するが、技術で予想を裏切られたのは思ったほど伸びなかった部分か。この不景気とネットブック流行によるトレンドの変化で、もう何年かするとプロセス微細化のために半導体企業が膨大な工場投資をできるか不透明になってきた。総合電機各社が投資先を半導体から電池に移しつつある。自動車バブル、環境バブルが弾けた後どうなるか分からないけど。
6年後ともなれば普通に各社がLTEに移行し、クラウドやARはそこそこ受け入れられているのではないか。今度こそHDDの多くがSSDに、光ディスクはメモリカードに入れ替わる。アナログは停波していないかも知れず、マルチメディア放送が受け入れられているかは疑問も。というかワンセグ相当の画質なら通信のマルチキャストとかVoDでいいじゃんという気が。米国と違って多チャンネル放送が定着していない日本に、多チャンネル・モバイル放送なんて需要があるのか。事業者の意向もさることながら広告がつくかで決まるだろう。まあVHFじゃ使い勝手が悪いし他に使途もないのかな。多くのノートPCやモバイルゲーム機にはSIMスロットが載る。Felicaベースの電子マネーは相互運用が進んでいて欲しいぞ。エージェント系のサービスが流行るかは、プライバシー法制との兼ね合いと、キラーアプリが出てくるか否か。位置情報と絡めたリコメンは出会い系で使えると面白いんだけど、時節柄そういうことの難しい時代となってしまった。
悪いことも予測しておくと、最近まで銀行大合併や郵政民営化特需で需給が逼迫し、金融再編特需の一服と不景気で引退する団塊世代の技術者とか、数年後に景気が良くなっても労働市場に戻ってこないだろう。1980年代に汎用機で基幹システムを組んだ人々のノウハウが、ちゃんと若い世代に伝承されているか問われるんじゃないかな。6年後から10年後にかけて、この間JRの運行システムで生じたような運用ミスによる大規模システム障害が、これまで以上に頻発するかも知れない。分かる人が現役を退き、小手先のメンテしかしたことのない人材ばかり残っているシステムは多そうだ。自治体の現場とかも非正規雇用の割合を増やしたことで混乱を来しているかも知れない。派遣ばかり使い捨てていると人的資本が蓄積されず、しばらく過去の蓄積で現場がフォローし、コスト削減効果が出るけど、どっかで破綻しそうだよね。その辺が6年後には出てくるか、だいぶ先の話なのか、よく分からない。もう始まっているのかも。
ゆとり教育からの転換は成果が出るか疑問だ。問題の根には、工業化のためのマスプロ教育とか、立身出世を餌に自分の頭で考えさせない手法が説得力を失ったことがある。教育なんて10年や20年でころころ変わっても困る世界だが、中央集権で朝令暮改を繰り返すよりも、多様性を認めて優れた手法を評価し横展開することが大事だ。現場の先生は真面目にやっているが、中央政府が何かやろうとするほど紙仕事が増える。地方より中央がリベラルだから、地域の好き勝手にやらせると却って保守化する懸念も大きいが。
いい大学を出てもいい仕事に就けるか分からなくなって、それが余計に保護者の高学校歴志向を煽る。頼りになる武器が人脈と文化資本なら、子供は旧帝大早慶に入れたい。中途半端な大学に入れるくらいなら、就職先とのレリバンスが確立している職業教育を受けさせたい。カルチャースクール的に中途半端なガクモンしか提供できていない中堅私大は定員確保に苦しむ。自習型教材が急速に進歩して、学習塾の役割はメンタリングの比重が増す。子どもはどんどん進歩して、社会は劇的に変動するけれども、多くの教師は追いつけない。それが教師の権威を失墜させ、教科書は分厚くなって授業計画に余裕がない。
こんな風に展望したとき、国がすべきことって何か。結局のところ人を育てるために、民間にはできない投資を行うことに尽きるんじゃないか。教育、職場、地域でそれぞれ人を大切に育てる仕組みを再構築する。右肩上がりの時代なら自然と進む技術継承やロールモデルの提示が、激動の時代にはさっぱり機能しない。ロールモデルの再構築とか、頑張る機会を与えられていない人々に対するケアを、どこまで国ができるか。
民間だって経営が安定していれば人的資本を蓄積できるのだから、いくつかの産業でいい製品をつくれば買い上げる仕組みをつくれないか。米国のように軍需でやる訳にはいかないから、他で国益に適って技術を牽引し、国が支出できる領域があるといい。戦争を外交の一環と拡大解釈すれば、国際協力や環境対策(エネルギー安全保障)、農業再生(食糧安全保障)の分野で、グランドチャレンジ型のプロジェクトをやると面白そうだし国益にも適う。
日本は昔から基礎技術には力を入れられなかったが商用化には長けている。ベル研からトランジスタのライセンスを受けて量産に成功しラジオに使ったソニーRCAがテレビに使おうとして失敗した液晶を電卓に使い、数十年かけてテレビに持ち込んだシャープ、IBMを離れたアムダールと組んでIBMより先にLSIベースのCPUで互換汎用機をつくり性能でIBMを超えた富士通いずれも、海外の優秀な技術を見極めて、市場と結びつけるところで能力を発揮してきた。この辺の優位性は今も続いているのだろうか。
みんな潰れかかったGMを馬鹿にしているが、彼らが軍需で培った自動運転技術とか諸々の基礎技術は侮りがたい。電気自動車になれば今と比べてモジュールの組み合わせに近づき、ソフトウェアでエクスペリエンスを制御できるようになってパソコンに近づく。軍事車両の省エネ化は兵站に効くし、市街戦の無人化技術は民需転換も期待できる。それでGMが復活するかは別として、研究の多くは公開され論文も出るだろうし、自動車制御ミドルウェアベンチャーが登場して、中国やインドに廉価の電気自動車をつくらせてソフトを供給するモデルだって考えられる。自動車制御ソフトの信頼性確保については、人工衛星や航空宇宙産業の品質管理手法が応用されると考えられ、欧米が日本よりずっと蓄積を持っている。
とか思いつくことは諸々あるんだけれども、だらだら書いていてもさっぱり頭がまとまらない。もっとシンプルに、いまやるべきことはコレ!とかいえた方が格好いいんだろうなー。困った困った。