雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

個人情報保護法改正へ向けた期待

昨日Twitterでの議論で知ったのだが個人情報保護法の改正が検討されているらしい。ググっても毎日新聞の記事しか出てこないが、他の新聞は取り上げたのだろうか。どういう方向での改正が検討されているかまでは読めないが、個人的には前々から個人情報保護法は大幅に見直す必要を感じていたので、困難な仕事だが是非ともやり遂げて欲しい。

05年4月に全面施行された個人情報保護法が法改正を視野に見直されることになった。福島瑞穂消費者・少子化担当相が先月23日の記者会見で表明し、今月から消費者委員会を中心に論議される見通しだ。(略)堀部政男・一橋大名誉教授(情報法)は「自分の情報がどこにあるか分からない状況の中で、新たに『自己情報保護期待権』のような権利を検討していくべきではないか。独立した監視機関を置くなど見直しには新しい情報技術に対応した論議が不可欠だ」と指摘する。

公平かつ新規参入・技術革新に柔軟な規制とすべき

現行の個人情報保護法OECD Privacy Guidelineを契機としているが、スキャンダル報道への規制や住基ネットを巡る論争に引っ張られた影響で、保護対象を個人を特定できる情報に限定している。また検討段階で立法に反発した報道、著述、学術、宗教、政治などの目的を適用除外としており、ネットや新規参入者に対しては厳しい規制を課している。改正時には原則として適用除外をなくし、どの業界も遵守できる公平かつ公正な規制とすべき。

現行「個人情報」の範囲に限らず保護の原則を検討すべき

今日プライバシーを扱う情報システムとしては、住基ネットのような厳密に番号で管理された個人と紐付けられたデータベースだけでなく、行動ターゲティング広告や、検索エンジンにクローリングされた官報に掲載されている破産者、写真共有サービスへの被写体のタグ付け・顔認識の適用、監視カメラの被写体など様々なプライバシー情報が想定され得る。現行の個人情報保護法が規定する「特定の個人を識別することができるもの」(第2条1)に限らず、プライバシー・パーソナルデータ等も保護の原則を検討すべき。

主務大臣制を廃止して独立監督機関を置くべき

現行法では個別ガイドラインの運用を各省庁に委ねているが、そのことで複数の官庁にまたがる場合や、どの省庁が監督すべきか判然としない新たなデジタル融合サービスへの対応が後手に回っている。省庁縦割りを廃して公平かつ迅速に対応できるよう、欧米のプライバシーコミッショナーに相当するプライバシー専門の独立監督機関を置くべき。

誤解に基づく萎縮を解く啓発活動を

個人情報保護法を曲解して学校によっては連絡網をつくらなくなる、親族や友人からの安否確認に病院が答えないなど、萎縮が幅広く見受けられる。単純で遵守しやすい規制として十分な啓発活動を行い、こういった萎縮や過剰反応をなくしていく必要がある。広く萎縮がみられる事案に対してはガイドラインの提示やノンアクションレターを活用することも考えられる。

プライバシー保護技術の普及を促す規制へ

現行の解釈では暗号化されたデータを紛失した場合も情報漏洩として同じ扱いを受けるため、データ保護技術が普及せず、PCの利用を厳しく制限する方向となっている。情報漏洩の扱いを悪用されるリスクに応じて細分化することで、データ保護技術の普及を促してIT利活用を阻害しない制度とすべき。

迅速な判例ガイドラインを確立を図るべき

日本ではプライバシーが成文法で認められておらず判例法理として確立している。一方で民事紛争を裁判で解決することを忌避する風土がある上、原告適格を厳しく制限しているためクラスアクション等で判例をつくることが難しい。そのため新たな状況に適応した法律の有権解釈が欧米と比べて出遅れる傾向にある。プライバシーの保護は表現の自由、営業の自由、公共安全などと競合する場合がある。個々の典型的な事案について早期に判断を下せる仕組みをつくるべき。

国際競争力を削がない規制とすべき

日本だけ諸外国と比べて厳しい規制を課した場合、サーバーの国外流出による規制の空洞化や、事業者の萎縮による技術革新の停滞など国際競争力低下が懸念される。逆に日本が個人情報保護法制の不備で諸外国(特にEU諸国)から差別的な扱いを受けた場合、事業者に国際展開に支障をきたす虞も考えられる。過度に産業界の足を引っ張ることのないよう、諸外国の制度と調和を図りつつ適切に保護すべき。