雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

IPTVより楽しげなTV 2.0を構想してみる

どっかでIPマルチキャスト放送の定義を巡って盛り上がっていたが,みんな何故あんなに血眼になってるんだろう.結局のところテレビはどこまでいってもテレビじゃん.電波で送ればタダなんだから伝送路に高いカネを払う奴なんていないんじゃん.多チャンネル化にそれほどニーズがあったら,CS放送はもっと流行っただろうし.ロングテールな世界は放送モドキじゃなくてyoutubegoogle videoが引き受けるんだろうし.どう贔屓目にみてもチープかも知れないケーブルテレビっつーか,成熟した市場向けの持続的イノベーションでしかない.ブロードバンドのキラーアプリと期待する向きもあるようだが,ブロードバンドより遙か昔からテレビがあった以上,じゃあブロードバンドなんていらないじゃん!という気がする.
成熟産業の寡占企業同士が互いに縄張りを侵犯しあうっつーと,ガス会社がコジェネで電気も売ったり,電力会社がオール電化でガスを追い出したり電線ついでに光ファイバも引いてみたりという話がある.同じように伝送路を放送局が独占していたところに,電話会社や電力会社も参入する,というシナリオも考えてみたけど,コンテンツを供給するのは同じ放送局だから,やっぱり意味ねーじゃん.
いまのケーブルテレビのヘッドエンドよりPCサーバーの方が安いじゃん,とか,同軸ケーブルじゃなくて銅線や光ファイバで放送を送れるんですよとかって事業者側のコストという問題でしかないし,これでさえ業界の事業構造を考えると,ベンダはサポートを手厚くして従来と似たような価格で売った方が合理的だ.消費者からみて何ら付加価値がないし,B2C事業としてはお金の香りがしない.*1
IP電話みたいに従来より安くなりそうならともかく,空から無料で降ってきたものを誰が高いカネかけて買うというのだろう.通信も放送もグレートゲームだから「通信と放送の融合」というと誰もが浮き足立つが,掛け金が大きそうにみえるだけで,実際のところあまり中身もない.
最近『ヒルズ黙示録―検証・ライブドア』を読んだのだが,声高に「通信と放送の融合」を唱えてたライブドアにせよ楽天にせよ,株価が過大評価されてる時に,できる限りの資金調達を行って,顧客リーチやキャッシュフロー,優良資産を抱えているキー局を買いたいというのが本音で,ロクな構想を持っていた訳ではない.下手なポンチ絵に騙されてるんじゃなくて,個人投資家を騙すために下手なポンチ絵を使ってる程度に賢さは感じるけど.
ロングテール系プル型コンテンツは放っておいてもWinnyYoutubeが快調に伸びてるので,これから考えるべきはプッシュ型の受動視聴について,ブロードバンドでどうユーザー体験を変えていくかだ.そういう問題意識では情報家電のプラットフォームを押さえる必要なんかどこにもなくて,パソコン向けに面白い映像配信ソフトを書けば,数年後に家電の方からパチってくる.
チューナー付パソコンはチューナー制御用APIが整理されてないという問題があるんだけど,例えばSNSメッセンジャーと連携して友達が一番みてるチャンネルに常に切り替わるテレビとか,コメントやアクセスの多いYoutube映像をダラダラ流し続けるとか,いまのテレビより横着に楽しめるものをつくれないかな.とゆーか横着に楽むためのテレビを,カネかけてまで面倒なプル型メディアにしようと血眼になってる人々って,何を考えてるんだかさっぱり分からない.キャプテンとかインターネットテレビとかデータ放送から何も学ばなかったのかな.
その昔,ニュー何たらとか次世代何たらというのを眉唾で眺めたように,そろそろIP何たらといわれたら眉唾でみた方がいいだろう.それらが結果としてIP化されたとしても,それ自体は消費者にとって何ら意味ないし,もっとユーザー体験に即した新たな付加価値に着目した方が良さげだ.
もちろん「IP何たらが世界の潮流」とかいう強迫観念と危機意識が,既得権益にしがみつくオヤジどもを推し流していくことに喝采するのは楽しいし,騙されたふりして煽ってもいいけど「でもそれって新しい商売でも技術革新でもないよね」という視点を忘れると,議論が浮ついてしまう.

*1:デジタル放送と同様に,通信事業者や放送局が新しい機材を山ほど買ってくれるとか,B2Bの事業機会がなくもないけれども,それだってB2C事業者が儲からないことには一過性の需要でしかない