少子化対策には子持ち/子なし若年層を呼べば
役所による少子化対策について,若者を馬鹿にしているとしか思えないピンボケな話ばかり聞こえてくる.少子化の原因が所得の二極化や雇用の流動化による晩婚・非婚化にあること,子育てにかかる絶対額よりも,子育てにかかる時間の機会費用や,厳しい勤務実態と不釣り合いに脆弱な子育て支援環境にあることは明らかだ.出産費用や避妊費用そのものを重いと感じているひとは限られているし,ましてや出会いがないから結婚しないという話ではない.いまどき,出会っても結婚したり子供を産めない若者の方が多いって訳だ.
だから専門委が「地域と家庭の多様な子育て支援」を「まず取り組むべき課題」と位置づけていることは非常に妥当だけれども,例によって楽をしたい役人と手柄を立てたい大臣が提案を骨抜きのバラ蒔き話にすり替えようとしているのか.だとすれば言語道断である.
うちには3人の子供がいるが,けっこう子育てというのは大変だ.ふたりめができるとき,SEとしての勤務や給与じゃ生活が成り立たないこともあって転職した.共働きだが,子供が病気になれば休まざるを得ず,出産のたびに休む妻は正社員ではなくアルバイトやパートしか働き口がない.僕の両親とも相変わらずフルタイムで働いているし,かみさんは母子家庭で義理の母は亡くなったので,家族で誰か子育てを応援してくれる訳ではない.晩婚化が問題だというけれども,年金受給年齢が引き上げられた結果,20代で子供を産むと親の支援を受けられないのである.
世田谷区で幸いなことに保育園に入れたが,地域によっては難しいのだろう.保育園のあてがないから就職活動もうまくいかず,それで保育園待ちの優先順位が低いままという悪循環も起こり得るようだ.ぼくが子どもの頃は勝手に近くの公園で遊んでいたが,最近は子供相手の犯罪が多く報道されるようになり,子供を公園で遊ばせるときは常にみていないといけないらしい.はっきりいってすごい手間だ.周りに自分と似たような境遇の友達もおらず,可処分所得の高い周囲との交際費も嵩む.
所得や待遇でかなり恵まれているであろう自分でさえ負担感がこれほど大きいと,やっぱり多くの人は産めないよなと切に思う.この少子化対策はそうだな,例えばライフスタイルが違ったり,親や地域社会による子育て支援のあった時代しか知らない年寄りエリート連中に,面と向って「出会いを大事にしろ」とか「出産費用くらい応援してやるから子供つくれば」といわれた感じ?とりあえず氷水をぶっかけて「一昨日出直せ」と怒鳴りたい.ま,ヤヤコシイ問題だから適当にカネばら撒いてお茶を濁したい事務方&大臣の気持ちも分からなくもないが...
「幸せな出会いで、結婚を」と県こども家庭課が発案した。最終ページには余白があり、「自分自身の出会いの物語を書き込んで」と担当者。
同氏が「政府や与党の検討会などで提案されている事項を再編成した」として諮問会議に示した案には、「出産無料化」や「乳幼児手当の創設」「不妊治療の公的助成拡大」など経済的支援が明記された。若年層の経済負担軽減の必要性を訴える同氏の意向を反映したものとみられる。
だが、子育て支援や労働の専門家ら8人で構成する専門委が10回の議論をへて15日に提出していた報告書は、「子育て支援の環境が整備されていない現状では経済的支援のみでは子育ての安心感にはつながらない」として、「働き方の見直し」と「地域と家庭の多様な子育て支援」を「まず取り組むべき課題」と位置づけ、「乳幼児手当」などはあえて盛り込んでいなかった。