雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

けれども経済は成熟する訳で

これから右肩上がりの成長ってことはないし、階層間流動性がなければ労働者の多数を占める非正規雇用者のモチベーションは上がらず、生産性、生産性と掛け声の割に経済のパフォーマンスは人口減以上に落ちてしまうかも知れない。
戦後日本の職業倫理を支えてきた、真面目に働けば豊かになり続けるという物語のあとに、もっと持続可能性の高い次の物語をどう創出していくのか。宗教って伝統的に会員間の緩やかな紐帯を提供したり、矛盾に満ちた世界を認知限界の内側まで縮減する価値観を提供するかたちで、人々の社会的厚生に資してきたのではないか。
宗教なら豊かさの次の物語を何か持っているのではないかと考えて本書を手にとった。しかし本書によると、特に戦後に急成長した新宗教は、高度成長期に東京へ出てきた人々に対して村社会に代わるコミュニティを提供し、信仰への報いが経済成長による豊かさというかたちで還元される構造だと経済成長が鈍化してからは成長が頭打ちになったようだ。低成長に入ってから伸びた新宗教も取り上げているところが面白いが、何がどう受け入れられているのか分析が不十分に感じる。
総じて幕末からの新宗教も含めると、社会が成長の過程で激変する中で、帰属の対象を提供したり、批判的であれ迎合的でされ新しい時代を受け入れるための世界観を提供したりというのは、新宗教の重要な役割なのだろうか。
ただ明治維新からバブル前後まで大きなトレンドとしては成長期であって、これからの成熟期に適応するための宗教観は、もっと別の構造から出てくるかも知れない。江戸時代に生まれた宗教って何だっけとか、もうちょっと勉強してみたくなった。
足下の経済的基礎条件は動かそうにも限界があるが、将来の豊かさ以外であっても何か将来へ向かって信じるものがあれば頑張っていけるのが人間ではないかと思う。だから経済的に行き詰まれば行き詰まるほど、動員に当たっては期待を統御する宗教の社会的影響力は大きくなるだろう。期待格差は必ずしも予想生涯賃金そのものから生じている訳ではないのだ、きっと。

目先の給料がどうであるかよりも、自身の将来の給料や子の給料がどうなるかという見通しこそが、中流意識の醸成に影響力を有するものと考えられます。将来見通しが足元のトレンドに左右されるならば、これは現在の絶対水準よりもトレンドによって階層意識が定まる部分が多い、と言い換えられます。このwebmasterの推測が正しいのであれば、qushanxinさんの階層論については、

  • バブル期以前は上昇トレンドのため「中流」だと思っていた「不安定低所得者層」が、バブル崩壊以降の右肩下がりトレンドによって期待が持てなくなり、そうでないとの意識を抱き始めた、
  • 現在の絶対水準が悪いわけではない「旧中間層」においても、とりわけ子の就職難に直面した者を中心に、将来の期待が剥がれてより下の階層に転落するのではとの不安が広がっている、

というように解することが適当であるように思われるのです。