雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

7Kをなくすのは簡単

IT業界を一括りに7Kというのは誇張されたイメージだ。平均すれば他業種より給料はいいし残業も少ない。若くして昇進するチャンスも成熟産業よりは大きい。けれども7Kな職場も確かに存在し私も垣間見る機会があったが、いちどそこに足を踏み入れると抜け出すのが非常に難しい。こうしたデスマーチ現場の惨状が面白おかしく伝わっているのも確かだ。だからIPAの理事長が「根拠がないと思っている」と断言してはまずい。
問題の背景としては恒常的な人材不足、多重下請け、偽装請負、事前見積もりと人月ベースの取引慣行などがあるといわれている。産業構造や人材の練度といった問題を一朝一夕で改善することは難しいが、今すぐできることもある。それは労働基準法の厳密運用と通報制度の拡充である。
マクドナルドの店長が管理監督者でなければ、PG、SEどころかPMの多くも管理監督者ではない。片っ端から残業代を支払わせれば、恒常的な残業を強いる問題企業はたちどころに倒産して業界を浄化できるのではないか。摘発に当たっては下請けだけでなく発注者も公表すべきである。無茶な納期や工数を見直すよりも、現場を犠牲にした方が高くつくという環境をつくらねばならない。
僕は恒常的な長時間労働が必ずしも悪いとは思わない。若いうちに何度かデスマーチを経験すれば一皮剥けることもあるし、システムを予定通りカットオーバーさせたい、自分が手がけてこそ不可能も可能にできるという万能感と誇りを技術者として持つことは悪いことではない。けれども、健康や新技術の習得機会、幅広い視野や交遊関係、家庭の団欒など、恒常的な長時間労働によって失うものも少なくない。だから長時間労働は労働者の自主的な選択によって行われ、いつでも逃げ出せる途は用意すべきだし、仮に恒常的な長時間労働を前提とした経営の横行する業界や企業があれば、これは市場を通じて淘汰すべきである。
役所が本腰を入れて7K撲滅を図れば「IT業界=7K」というイメージも変わる。今回の予備調査は調査票を企業に送っているが、これでは実態を掴めない。個々の技術者にも聞くようにしなければサービス残業の実態は把握できないからだ。そして平均だけでなく偏差にも着目する必要がある。特に長時間労働については、恒常化していないか、しばしば火消し役と呼ばれる優秀な技術者に過度な負担が集中していないか、新技術を習得する余裕がなく技術者の中長期的なエンプロイアビリティが損なわれていないか、忙しすぎることが技術者の自発的選択かといったポイントが重要だ。IPAは業界の重鎮だけでなく、現場にいる技術者の声にも耳を傾けるべきではないか。

IPA 理事長の藤原武平太氏は、IT業界の仕事のイメージについて「3K、5K、7K、10Kなど私自身は根拠がないと思っていることが、面白おかしく伝わっている。このことが結果を裏打ちしているのだろう。私は由々しき事態と思っている」とコメントした。

情報サービス業は給与が高く残業が少ない、恵まれた職場だといえます。これは、多くの人が抱いているイメージと異なるようです。
その原因は、この統計数字からは不明ですが、次のような理由が考えられます。

  • 情報サービス業の平均年収が高いのは、研究所などを除けば、一般の業種と比べて、理系卒業生の比率が大きいため、大学院(修士)卒の比率が高いことが考えられます。
  • 情報サービス業は、交代勤務制度を採用していないこともあり、それのある他産業と比較して、所定内労働時間がやや短いのが一般的です。そのため、残業時間が長くても、実労働時間では大きな差がないことが考えられます。
  • 情報サービス業は、他業種と比較して平均年齢が低く、若くて管理職になる比率が高い傾向があります。そのため、給与が比較的高くなると思われます。また、年齢が高い部分で残業の差が大きいのは、管理職のため、残業が把握されていないことが影響していると考えられます。
  • システムの保守や更新は、通常業務を行っていない日に行うことが多くあります。本調査の対象月である6月は、連休が少ない月のため、残業が少ないのかもしれません。