雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

携帯コンテンツ規制 次の論点は

今日のICPC緊急シンポジウム 違法・有害コンテンツ規制の論点整理は素晴らしかった。5原則があるので誰が何を話したか具体的には書けないが、政界の動き、行政の動き、事業者の思惑が構図として繋がって断絶や争点もみえてきた。正直なところ、充実したゲストで大講堂で立ち見まで出たDMCと、後発かつ直前の告知で十数人しか集まらないICPCとで、本当に後からやる意味があるのか悩んだのだが、結果的には少人数で重要なステークホルダが集まり、ポジショントークではなくディープかつ本音の議論を引き出せた。この興奮が醒めやらぬうちに、僕の独断と偏見で状況を整理して次の展開を考えたい。
有害サイト規制は内閣官房IT安心会議が取りまとめ、総務省経済産業省警察庁文部科学省などが絡むが、どの省庁も主導権を取らずばらばらに取り組むホットポテトとなっており、政治家は痺れを切らしている。自民・民主で争点はなく有権者の関心も高いので政策協議には持ってこい。
フィルタリング事業者が「小さな投資で簡単に実現できる」とロビイングしているが、移動通信事業者は青天井の設備投資負担を懸念。総務省ブラックリスト方式の採用を求めているが、実効性やインフラ負荷の観点から移動通信事業者はホワイトリスト方式を望んでいる。
政治的には憲法上の表現の自由、通信の秘密、検閲の禁止との兼ね合いを懸念して慎重に議論を進めている。競争政策やフィルタリングDBの透明性・中立性、規制の実効性について当初はあまり論点となっていなかった。実際には大人同士が利用する出会い系サイトよりもコミュニティサイトを規制した方が犯罪抑止に有効だが、総務省の研究会での議論ではコミュニティサイトは規制対象外という前提で議論している。
福祉犯は1985年をピークに減っており、ネットや携帯の普及が未成年を対象とした性犯罪を助長しているとは定量的には言い難い。けれどもネットや携帯で出会って問題を起こす事案が現実に少なからずある以上、政治的言説として数が増えてないから問題ないという説明では通らない。フィルタリングを行ったからといって出会いがなくなることはないし犯罪が減るかさえ定かではない。とりあえずは座視できないから、できることからやってみようという状況。
有害サイト規制はPTAやフィルタリング事業者、ホットラインセンター、文教族などが熱心に取り組んでいるが、フィルタリング反対派からの冷静な議論や建設的な提案は充分ではない。事業者は反論しているが、周りからは責任転嫁しているようにみえている模様。総務省の研究会でmixiが移動電話事業者を批判していたが、だいたい未成年による利用を約款で禁止しているmixiが何故この問題と関係するのか、という指摘には思わず納得。
実際のところmixiが未成年による利用を黙認しているのは周知の事実だし、大臣要請で株価が大幅に下がったから、文句のひとつもいいたくなる気持ちは分かるけれども、市場は正直というか。ついでに株価の下げが大臣要請の発表された12月10日ではなく12月6日か7日からとなっているのは、ひょっとしてインサイダー取引だろうか。
まだ議論は混沌としているが、仮に今国会で有害サイト規制法案が審議されるとすると、会期から逆算して3月中盤には法案ができているので、できれば来月いっぱいまでには論点整理しないと議論をすっ飛ばして勝手に決まってしまう可能性がある。もっと時間をかけて議論を尽くしたいところではあるが、限られた時間を意識して対案を練る必要がありそうだ。ここでは、フィルタリングに代わる有害サイト規制の在り方について、いくつか要件を考えてみた。

  • 青少年を効果的に犯罪から守ること
  • 競争による技術革新を阻害しないこと
  • 技術的に実装可能で費用を抑えられること
  • 基準が明確で裁量的判断の余地が小さいこと
  • 出版物等への規制と齟齬のない制限であること
  • 正当な利活用やリテラシー教育の妨げとならないこと
  • 国際的に妥当な制度で海外のサーバーにも適用可能なこと
  • 措置の中立性・透明性が担保され外部から検証可能であること

公式サイト以外を全てフィルタリングするホワイトリスト方式を採るならば、公式サイトの選定基準を透明化することが大前提になる。一方でブラックリスト方式は、データベース運用やフィルタリング実施に多額の費用がかかる割に、中小ホスティング事業者を使った学校裏サイト等を全て捕捉できるか疑問が残る上、データベースについて透明性・中立性の担保や検証が難しい。例えば政党や宗教、同性愛サイトの扱いなど、政治的公正さの面でも疑問が残る。
例えばPICSやP3Pのような仕組みで、移動通信事業者から個人情報保護に配慮したかたちで携帯コンテンツ事業者に加入者属性のメタデータを引き渡し、携帯コンテンツ事業者は約款などに従って利用者を選別する、フィルタリングは端末のブラウザが行う仕組みはどうだろうか。
こうすればゲートウェイ・サーバーでの巨大なデータベースとの照合は必要ないし、通信の秘密も守られ、中立性・透明性をきっちり担保できる。ぜひ総務省通信プラットフォーム研究会で議論していただきたい。
明日締め切りの警察庁が出している出会い系サイト届け出制のパブコメで、年齢確認方法の強化策として、本人確認を義務化した場合のコンテンツ事業者の負担増が問題となっているが、この方式であれば個々の事業者が個別に本人確認を行う必要がなくなり、負担を大幅に軽減できるのではないか。
PICSやP3Pは普及しなかったじゃないかという反論も考えられるが、これはインセンティブがないからであって、未成年から使ってもらうためにはメタデータを付与するしかないという仕組みにすれば各社とも真面目に対応するのではないか。
メタデータのついていないサイトをブロックすることは止むを得ないし、誤ったメタデータの付与に対しては、事案の通報を受けた窓口機関が、メタデータとコンテンツの内容を精査し、整合を取るよう適切な指導を行えばよい。
この方式であればディープリンクのフィルタリングにも対応できる。例えば未成年が携帯電話からはてなにアクセスした場合、真面目な僕のエントリは読むことができるが、id:hashigotanの赤裸々なエントリは親の許可がない限り読めないという設定が可能になる。いま検討されているフィルタリング方式でははてな丸ごとブロックされることになるだろう。という訳で皆様から順調にお買い上げいただいているidea:18731について、時価総額が1000ポイントに届くところまで買い増した。
これ業界的にはすげー重要な問題だし、是非はてなで実装して欲しいんですよねぇ。