電波料を総括原価から逆算しては
電波利用料の不公平は昨年の研究会で見直され、来年度からの電波利用料の法案化作業が大詰めを迎えています。国民共有の財産である電波を利用して寡占的に事業を展開している以上、テレビ局は収益に見合った電波利用料を納めるか、コストに見合った電波料の料金設定を行うべきではないでしょうか。
テレビ局の電波利用料負担は、ここにあげなかった局を含めて総計で34億4700万円にしかならない。
一方で営業収益は3兆1150億8200万円。
電波を独占して上げる収益に対して利用料が千分の一。
低すぎませんか。
適切な電波利用料をどう設定すべきでしょうか。最も過激な方法はオークションです。つまり最も高値をつけた事業者に電波を落札させるのです。これは新規の周波数帯域を割り当てるには有効ですが、既に周波数が割り当てられて事業が行われている場合には適用が困難です。ちょうど米国で行われている700MHz帯の入札が話題になっていますが、既存の放送に使う周波数帯をオークション形式で入札にかけた事例はありません。また移動通信であっても落札価格が高額となりすぎて、肝心のサービス提供に必要な設備投資が滞った例もあります。
もう少し現実的な案として、電波料*1に規制をかけることが考えられます。これは電力やNTT東西などの指定電気通信設備に採用されている方法です。この場合は原価を積算して適正利潤を乗せた水準での販売を義務付けることになります。放送の場合は電波料を設備の減価償却費と電波利用料を足した価格に適正利潤を乗せた水準に規制することになるでしょう。通信と比べると放送の技術革新は緩やかなので、指定電気通信設備に適用されている長期増分費用方式ではなく、電力に適用されている総括原価方式で充分でしょう。
この方式の問題は、仮に放送局による電波送信にかかる費用が一定だとしても、時間帯によって電波の広告価値が大きく異なることです。広告価値は市場で決まるのだから、電波料もプライムタイムなど広告価値の高い時間帯で高く取ることが現実的ですし、そういった裁量権がなければテレビ局の経営努力は行われません。ですから電波料の価格設定は放送局の自由裁量とし、電波料から原価である放送設備の減価償却費+適正利潤を差し引いた分を電波割当と独占設備に起因する独占利潤と仮定し、その一定割合を電波利用料として徴収することが考えられます。
番組制作費が膨らむほど電波利用料を圧縮できる*2ので、放送局が番組制作にお金をかける大きなインセンティブとなり、番組制作会社の労働環境改善や、コンテンツ立国へ向けた番組品質の飛躍的な向上も期待できます。
但し、こういった考え方は電波利用料を電波というクラブ財の共益費と捉える現在の解釈から大きく逸脱しており、値上げ分をどういった使途に回すか、立ち行かなくなるであろう地方局の経営をどうするか等、様々な議論を惹起することになるでしょう。
いずれにしても電波利用産業が大きな利潤を上げる一方で、その電波利用料の算定根拠が曖昧なことは問題で、説明責任を明確にして透明性を確保し、国民の財産である電波が有効に使われ、その恩恵が等しく国民に還元される枠組みを考える必要があるのではないでしょうか。
「あるある」の場合、年間広告費50億円のほぼ半分が「電波料」で、関西テレビだけで2.5億円とっていた。1本の番組だけで、関テレの電波利用料(1000万円)の25倍だ。「著作権」でも「言論の自由」でも何でも口実にして、彼らが電波利権を守りたい理由がよくわかる。
1/1000どころか、テレビ愛知とテレビ大阪は一万分の一以下。
しかしもっと驚きなのは、これが合法だということでしょう。