雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

ひとつの時代の終わり

昨年の春に議論したことが秋には実現してしまい、あまりの展開の早さに愕然としたが、改めて夏野さんに断言されると感慨深い。官製不況との誹りを受け、メーカーなど昔のモデルに戻せと働きかけているようだが、販売報奨金に手をつける決断をしたのはキャリアであって総務省ではないから元には戻らない。

「通信事業者は主役の座を降りた。通信事業者とメーカーのWin-Win関係は崩壊した」

ケータイ料金は半額になる! (講談社BIZ)

ケータイ料金は半額になる! (講談社BIZ)

コトの本質は日本のケータイ市場が成熟して高い成長を望めなくなったことで、モバイルビジネス研究会の役割はキャリアの背中を押し、全キャリアが一斉に料金体系を見直してもカルテルに当たらない環境をつくったことではないか。
わたしは当時、販売報奨金そのものは擁護しつつ、販売報奨金+高額端末というモデルしか選べないと買い換えサイクルの短いヒトへとの所得移転となって逆進性があり、少なくとも端末価格を可視化し、消費者に安い通話料+廉価な端末という選択股も提供する必要があるのではないかと主張した。最終的な総務省のロジックは山崎さんの著書が良くフォローしている。献本御礼。
これらの動きを受けて、日本でも同じケータイを2年とか3年は使うことを前提とした端末企画が進んでいるはずだ。昨年の春には大勢が決していたこと、開発サイクルを考えると、来年あたりから長く使い続けることを考えた端末が出てくると予想される。
iPhoneのように後から機能追加できたり、端末側のプログラマビリティを高め、クラウドのキャッシュみたいな構成にすることで後から柔軟にサービスを更新できるようになるだろう。AndroidiPhoneも単に技術論ではなく、そういう構造変化を念頭に眺めると何がパラダイムシフトか分かってくる。
日本メーカーは家電系の特許を持っている強みがあるが、プレーヤーとして自前で投資する体力があるのが何社か気になるところ。3.9Gから4Gにかけて最も注目すべき端末ベンダーって実は任天堂SCEではないか。自前で端末と通信のプラットフォームを握り、世界中に販路を持ち、開発者と強い関係を持っているからだ。
プラットフォームを握るとは、別に自前のOSとかポータルを持つことが大事なのではなくて、自社のリスクで技術開発に投資し、コンテンツプロバイダを育てることにある。だからi-modeではドコモが主役の座にあって、端末メーカーは下請けでしかなかったのである。これから通信事業者が主役の座を降りたとき、その役割を端末メーカーが担う気概はあるのだろうか。
個人的に注目しているのは、DSiPSPの次の次くらいの世代のポータブル・ゲーム機を考えたとき、そこにSIMスロットがついて自由に通信会社を選べるようになるか、それとも任天堂SCE自身がMVNOとなってゲームの特性に見合った料金体系を設定するかだ。どちらにしても移動データ通信サービスは価格競争になるが、これは日本国内で数少ない数千万台単位の新たな潜在市場だ。

「本体の値段だけでなく、毎月3000円ずつ払ってくださいと言って、それでもDSを買ってもらえるかというと、リアリティがない。でも、テクノロジーがいつか進歩して、顧客が毎月負担しなくてもそういう機能が付けられる時代が来るかも知れない。そういう時代には、任天堂がそういうことをやっても全然おかしくない」

こうした見解を元に、楠氏は「販売奨励金とSIMロックについては、現状のビジネスモデルに加えて、奨励金なしという選択肢も用意することが重要。たとえば4G導入時にSIMロックの規制を導入したらどうか」と提案した。

世界一不思議な日本のケータイ

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