雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

技術のフリして政治してる

セイコーの「仕事のフリして冒険してる」ってキャッチコピー素敵だなって思うんだけど、IPv6を巡る奇妙な議論って技術のふりして政治してるよね。IPv4アドレスが足りなくなる!って間違いじゃないけど普通のひとは困らない。ISPは必要な数のIPアドレスを持っているしFTTHになってから成長しているのはNTT系ISPばかり。e-MobileUQといった無線ブロードバンド系は困るかも。それこそSTFルータを置けば済む話だが。

が、しかし、だよ。この比較はめちゃくちゃなインチキ比較。 Pure v6じゃなく、デュアルスタックと比較すべき。 NATv4とデュアルスタックで、どちらが運用コストが高いかを考えるべき。 これ、へたすりゃ、運用コストでもデュアルスタックが高いよ。 つまり、移行コストがかかり、運用コストも高い方式へ JPNICは移行させようとしているんだ。

そのための布石として、NSP各社にはぜひSTF = Six to Four ルーターを立ててほしい。
エンドユーザー側にはGlobal IP Addressが一個必要だけど、別の言い方をすれば一個でいい。あとはこのIP Addressを持つ HostにIPv6 Router をさせればいいのだし。

あえてアドレス枯渇で生じる問題を探すと、新しいサービスを立ち上げようとする場合にアドレスを振り出してもらえなくなるという話はある。それでもISPのアドレスが足りている前提に立てば、最低ひとつのグローバルIPv4アドレスは持てる。ひとつのIPv4アドレスでグローバルなWeb系サービスを提供できるのか、C10K問題とか諸々あるけれど、アプリケーション・スイッチで頑張れば何とかなるんじゃね。サーバー側のIPv4アドレス節約術も、IPv6サービスも徐々に広がるだろうから、意識して移行しなくったって誰も困らないんじゃないかな。
IPアドレスの新規割り当てが難しくなる201x年以降、どうしてもIPv4アドレスを潤沢に使ったサービスを組みたければ、潤沢なIPアドレスを抱えた中小ISPを買収してISP事業はFreebitのようなISPアウトソーサーに委託すればいい。IPアドレス取引市場ができなくとも、IPアドレスを確保している会社ごと売買することはできる。アドレス確保のために追加費用が発生するのはおかしいという話はあるけど。
IANAプールが枯渇したところで殆どの日本国内の個人や事業者は困らない。日米と違ってBRICs諸国とかは困るからInternet Governance ForumではCritical Internet Resourcesとかいって議論しているようだけど。彼らこれからインフラ敷設するなら、最初からIPv6で設備を打てよとか思うけどね。そういった意味でIPv4を使い続けるって二酸化炭素排出量規制と一緒で途上国の成長を抑える効果はある。
では役所が何のためにIPv6の旗振りをしているかというと、アドレス枯渇で実際に困るからではなく、事業者間の公平性担保とか参入障壁の撤廃といった目的なのだろう。隠れた論点としては今後ISPという業態をどうするのか、誰からも買ってもらえなかった地域CATV会社をどう整理するのか、といった正面から論じにくい話題とか、NTT再々編の哨戒戦といった面も無視できない。
NGNに於けるIPv6マルチプレフィクス問題とか、あれは明らかに技術の議論ではなく、NTTコミュニケーションズを含むISP業界と、NTT東西とのバランスをどう取るかという政治的な問題だ。日本でのIPv6アドレスが枯渇しますよ!キャンペーンを深読みすると、2010年まで先送りしたNTT法をどうしていくか問題について真剣に考えましょうね、といっているんじゃないかな。
欧米では純粋に技術論として地味に議論されていることが、日本で妙に政治的となってしまうのは、騒いでいる人々がIPv6技術論にかこつけて、実はISP業界の存亡をかけた駆け引きをしているからで、根っこはネット以前につくったNTT法に引っ掛けてISP業界を強引に守ってきたけれど、これ2010年以降どうする?という問題だったりする。IPv4アドレス枯渇で日本の業界はそれほど困らないけれど、NTT法改正はISP業界の構図を一変させる可能性がある。
そういった政治論は別として、IPv6関連の技術開発は推進すべきだし、特にこの10年でIPv4のセキュリティやNAT技術が長足の進歩を遂げたのに対してIPv6実装で意外と追いついていないシナリオが少なからずあって、IPv6に移行して本当に困らないための研究開発を粛々と進めることは重要かも。